「働く」はみんなのもの

 

    シフト労働の闇(5)

     

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


                  逆切れ報復ツール

 

 昨年12月、大手住宅メーカー「大和ハウス工業」が国土交通省から営業停止処分を受けた。同社の社員約370人が、実務経験などの受験条件を満たさずに「施工管理技士」の国家資格を取得していたという。

 ニュースを聞いたとき、同社の支店のパートだった女性から聞いた15年近く前の話がよみがえった。

 女性は長く夫の設計事務所を手伝い、自力で2級建築士の資格を取得した。これを生かして同支店に就職し、顧客のリフォーム相談にあたった。一線の実務はパートが一手に引き受けていたからだ。

 正社員は、「ジェネラリスト」として転勤を繰り返すだけで、現場の実務に疎い。ところが、彼女が担当していた工事を、正社員男性の一人が自分の実績を増やすために取り上げ、欠陥工事を行ってしまった。

 工事の問題点を指摘するや大幅にシフトが減らされた。生活が立てられなくなって、女性は転職せざるをえなくなった。

 当時、私の取材に会社側は「調べたがそうした事実は突き止められなかった」と言った。シフト制というスマートな報復ツールによって現場の告発は排除された。

 そんな労務管理の行きついた先が、今回の資格不正問題ではなかったか。

 外食チェーン「かつや」のアルバイト男性のシフト労働事件も似ている。2020年、新型コロナ感染対策の不備に身の危険を感じて、出社拒否した。すると休業を強いられ、シフトも大幅に削減されたため、男性は労働審判に持ち込んだ。

 支援した首都圏青年ユニオンはこの措置を「逆切れシフトカット」と呼ぶ。

 パート・アルバイトの異議申し立てへの便利な報復ツール。シフト労働制の暗い用途が、浮かんでくる。