斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

  成人年齢引き下げ/その危険な現実

 

 

 

 20歳未満の若者が消費者トラブルに巻き込まれる危険がにわかに高まり、各方面で心配する声が上がっている。1月には都内の大学で、教職員向けの特別研修が催された。

 4月1日の民法改正で、成人年齢が18歳に引き下げられるためだ。現行法では保護者の同意が必要だった18、19歳にもカードやローンの契約が可能になる。マルチ商法などの悪徳商法にとっては、格好の草刈り場の出現だ。

 そんなことはもちろん、国会審議中からわかっていたことだ。批判もあったが可決・成立。政府に若年消費者を守る措置を講ずるよう求めた付帯決議も採択されはしたが、実現したのは消費者教育の充実や消費者ホットライン188番の周知程度で、およそ実効性がある対策とは思えない。

 昨年11月、金融商品取扱法違反容疑で7人が逮捕された仮想通貨の投資グループ「ジュビリー」は、「週1回ポチポチ(スマホの画面をタップ)するだけで稼げる」といった甘言で、世間知らずの学生らを引き込んだという。

 今、この時代にあえて成人年齢を引き下げた立法目的は、「積極的な社会参加を促し,社会を活力あるものにする」意義があるためだそうだ。が、私には、悪徳商法のマーケットを積極的に広げ、彼らをもうけさせることこそが狙いだとしか思えない。マルチ商法の歴史が、そのまま政府・自民党の腐敗史に他ならない現実を想起されたい。

 そもそも18歳を大人扱いしようという発想は、憲法改正国民投票法から生まれている。生活全般に関わる民法改正へと至った現在も、酒やたばこは20歳以上のままだったり、実にいい加減な運用が罷り通るのは、ハナから権力者らのご都合主義に過ぎない仕組みだからではないのか。

 改正法の施行は今さら避けられない。ではあるけれど、施行されても実態が深く検証され、成人年齢の再引き上げの議論へと向かう流れを望みたい。