雨宮処凛の「世直し随想」

             冷たい風の中で


 「もう死ぬしかないと思い、死ぬ方法ばかり考えていました」

 冷たい風が吹き荒れた元日、公園で出会った女性はそう言った。その少し前に家を出て仕事を探すため都心に来たという彼女は、数日前に野宿生活になっていた。気温が0度を下回った大みそかの夜、所持金も泊まる場所もなかった彼女はひたすら歩き続け、あまりのつらさに死を考えたことを語ってくれた。

 年末年始、そんな人たちに大勢出会った。すべての身分証を失った人、携帯が止まった人、所持金が千円以下という人、どんどん寒くなる中、野宿生活に数カ月耐えていたという人。

 12月30日と1月3日に東京・四谷の教会で開催された「大人食堂」には、食料を受け取るために2日間で685人が訪れた。その中には、若い女性もいれば、子どもを連れた母親の姿もあった。

 大みそかと元日に新宿の公園で開催された「年越し支援 コロナ被害相談村」には、2日間で418人が訪れた。うち2割を占める89人が女性だった。

 多くのボランティアが正月休み返上で奔走し、極寒の路上で凍える人々を暖かい部屋に案内した。年末年始、昨年に引き続き、東京都が住まいのない人のためにホテルを開放したのだ。臨時に開庁された区の窓口での生活保護申請に同行、年明けからは福祉事務所にも付き添った。この年末年始、都内だけで炊き出しや相談会を訪れた人は延べ2千人ほどになる。

 どうか今年は、みんながほっと一息つける年になりますように。そう祈っている。