暇工作「生涯一課長の一分」


       言葉間違ってるよ なんのための「団結」?


 〇肉〇食。「〇のところを漢字で埋めて四字熟語を完成させなさい」という設問があった。出題者は「弱肉強食」を正解と意図したのだが、解答の中には「焼肉定食」が結構多かったという。笑い話みたいな本当の話である。

 一年ほど前、いとこ同士の中学生が「安倍総理(当時)の積極的〇〇主義」の〇の中に言葉を入れよ、という「社会科」遊びをやっていた。出題者によれば「平和」と書きこんだ人は不正解で、正しくは「軍拡」なのだという。なかなかやるじゃないかと感心したものだ。たしかに、安倍さんによって「平和」という言葉が捻じ曲げられてしまったのは確かだ。

 

 職場や労働運動においても捻じ曲げられた言葉がたくさんある。その一つが「団結」である。「働く人々は団結しなければならないのですよ。だから、組合に加入してください」と、多数派労組の幹部がA子さんに迫ってきた。A子さんは今でこそ名ばかり正社員だが、元はといえば非正規労働者。勤務形態はアルバイト勤務である。非正規のときは多数派労働組合から加入を勧められることはなかったが、名ばかり正社員になったゆえに多数派労組がユニオンショップをちらつかせて組合加入を迫ることになった。非正規の正社員化は会社と多数派労組による「少数派組合への加入を阻止する」という狙いもある。そのキーワードが「団結」なのだ。

 だがしかし、何のための「団結」なのだろう。いうまでもなく団結とは社会的弱者である労働者が唯一の武器である「多数」を行動に結びつけることだ。団結を向ける先は経営者なのだ。たたかう姿勢があってこそ団結という言葉が意味を持ってくるし、その言葉を使う資格もある。

 ところが、A子さんに迫ってきたお方は、ともかくA子さんに少数派組合に加入されては困る、という態度が見え見えで、それは会社の意向でもあるということを隠そうともしなかった。「団結」の御利益が具体的にA子さんにどのように還元されるかなどの説明もなかった。

 闘う相手を取り違えているのは、多数派労組の上部団体である連合もそうだ。連合会長の芳野友子氏は、全労連や共産党を敵視し、選挙においては野党共闘をあからさまに分断しようと企図し、一般新聞の投書欄でも多くの読者からも「団結を壊すのか」(この場合の「団結」は正しい使い方だ)という批判が相次いだ。しかし、芳野さんは「(全労連や共産党は)民主主義と相容れないから」という。芳野さんが「民主主義」の判定者だとは知らなかったが、言葉を大切にしない、意味を勝手に捻じ曲げるという点でも安倍さんや自民党政治との親和性ふんぷんである。