上智大教授

   三浦 まり さん

 

女性リーダーが普通の世界に


             Profile

 みうら まり 1967年生まれ。米国カリフォルニア大学バークレー校にて博士課程取得。専門は現代日本政治論、福祉国家論、ジェンダーと政治。東京大学社会科学研究所機関研究員を経て現在、上智大学法学部教授。若手女性のリーダーシップ養成を行う「パリテ・アカデミー」の共同代表を務める。著書に「私たちの声を議会へ―代表制民主主義の再生」(岩波現代全書)、「日本の女性議員 どうすれば増えるのか」(編著:朝日選書)など。


 私は、国会や地方議会の女性議員を増やすために、女性候補者を育成する活動をしています。議員が男性ばかりだと、暮らしや仕事に関する法律や政策に、女性の意見が反映されないからです。女性が普通にリーダーになれる社会にすることは、暮らしやすい社会をつくる第一歩です。

 政治の世界はもちろん、労働組合や市民団体などあらゆる分野で、多くの女性が運営に深く関わり、決定権を持つことが必要です。意思決定機関に女性が増えると「組織運営の透明性が増す」といわれます。男性ばかりだと会議後の飲み会で物事を決めがち。女性が多くなれば、それは通用しません。

 例えば、家事や子育て、介護を担っている女性が多く役員になれば、生活者としての視点や声が、組織や団体の方針に反映されるようになります。皆切実な要求を持っています。議論は活発になります。そこで交わされる言葉が、より多くの人に分かる言葉に磨かれていきます。その結果、運営の透明度が増し、より多くの人が参加してみたいと思える組織になっていきます。

 一部のおじさんたちが運営の決定権を独占し、自分たちにしか分からない言葉で話している組織だと、魅力はありません。若い人は敬遠するでしょう。より多くの女性を執行機関に迎え入れることは、組織や運動を活性化するための第一歩なのです。

 

・女性の参加を高めるには

 子育て中の女性は、仕事を終えた午後5時から、子どもを寝かせる午後9時までが、一番忙しい時間帯です。そこに会議を設定されると、役員になりたくてもなれません。

 多くの女性が役員になれるようにするには、オンライン機能を取り入れ、大胆に活動スタイルを見直すことが必要です。討議資料データを事前に送り、短時間でオンライン会議を行うという方法があります。もっと女性を専従役員に登用し、日中の活動を保障する方法もあります。女性の参加を高めるための意識的な努力が必要です。

 昨秋、連合で初の女性会長が誕生しました。前年には全労連で女性議長が初めて就任し、二つの労働組合ナショナルセンターのトップが女性になりました。

 女性役員は経験不足で不安を感じることがあります。男性のように重要な役割や任務を与えられてこなかった場合が圧倒的に多いからです。

 「ガラスの天井」を破ったのに、実は「ガラスの崖」に立たされていた、ということがよくあります。次代を担う女性たちが「チーム」として支えて欲しい。たとえ道半ばで倒れても「女性だからダメだった」とは言わせない、女性が継続的にリーダーになれる道筋をつくれるよう期待しています。