「働く」はみんなのもの

 

    シフト労働の闇(3)

    見えなくされる失業

 

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 「女性不況」という呼び名が生まれるほど大量の女性非正規の雇用喪失を生み出しながら、なぜ女性の失業率は男性より低いのか。

 あるパート女性の体験はその答えにヒントを与えてくれる。

 女性の職場では、2020年6月、パート全員に、週1回のシフトを受け入れてほしいという「お願い」が出された。理由はコロナによる経営不振だ。

 だが、女性は疑問を持った。実感では仕事量はさして減っていない。職場で理由としてささやかれたのは会社の上場計画だった。

 新規上場で、コンプライアンスは重要な審査要件になり、解雇をめぐる紛争は上場見送りの原因になることもある。これを避けつつ銀行が求める人件費削減を実施するため、週1回のシフトで兵糧攻めにし、自主退職させるという憶測だ。

 この会社ではコロナ禍対応として、正社員について雇用調整助成金を利用した休業手当を支給し、休ませていた。パートの大量解雇は、この雇調金の支給要件にも抵触しかねない。

 シフト制は、必要なときだけ働き手を呼び出し、「解雇」なしで、スマートに雇用を減らすことができる便利な道具なのだ。

 野村総研は2月、「シフトが5割以上減少し、かつ休業手当を受け取っていないパート・アルバイト就業者」を「実質的失業者」と定義し、全国の20~59歳のパート・アルバイト就業者の男女を対象にインターネット調査を行った。それを基に推計すると、「実質的失業者」は男性約43万人に対し、女性は約103万人にも上った。女性の失業はこうして不可視にされていく。

 10年前、取材でパート女性がつぶやいた言葉を思い出した。「パート殺すにゃ刃物はいらぬ、シフト減らせばそれでいい」