「働く」はみんなのもの

     

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 「会計年度職員」の不思議(4)

    お上主導の「労働時間差別」

 

 行政が差別を主導するなんて、あってはならないことだ。だが、会計年度任用職員制度はその常識を覆した。これまでも取り上げてきたパートとフルタイムの格差は、オランダなどで禁じられている「労働時間差別」とそっくりだからだ。

 地方公務員法22条では仕事の負担度やスキルと関係なく、週労働時間が正規職員より短ければパート、同じならフルタイム、と規定している。それだけでフルタイムには正規職員と同じに「給与」や退職金が支給され、パートは従来の非正規職員と変わらない「報酬」のままだ。

 「労働時間差別」とは、このように短時間労働だというだけで賃金や待遇に大差をつけることをいう。

 賃金は仕事の対価だ。時間が短いだけで極端に低く抑えられれば対価に見合わない支払いとなる。長時間働けない子育て中の女性にとっては「間接差別」としても機能する。だからこそ欧州の国々では、同じ仕事に同じ時給、は常識だ。

 5分でも10分でも労働時間を短くすれば、簡単に人件費が削減できる。そんな簡単な賃下げ方法が横行すれば社会はデフレになる。

こうした批判に、総務省は「会計年度任用職員制度の導入等に向けた質疑応答」で、「財政上の制約を理由として合理的な理由なく短い勤務時間を設定することは改正法の趣旨に沿わない」と、一応、くぎを刺している。ただ、職務の客観評価方法がない日本社会では、「財政上の理由じゃないです」と雇い主が言えば、追及は簡単ではない。

 公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)の2022年調査報告では、会計年度任用職員制度に移行した時、フルタイムからパートに一方的に変更され待遇が下がった人もいた。これが「労働時間差別」でなくてなんだろう。