斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

       台湾有事がなぜ日本有事か

 

 自民党の麻生太郎副総裁が8月末、横浜市内で開いた麻生派の研修会で、こう言い放ったそうだ。中国軍による台湾侵攻が始まったら――。

「沖縄の与那国島にしても与論島にしても、台湾でドンパチ始まるということになったら、それらの地域も戦闘区域外とは言い切れないほど、(台湾)国内と同じ状況になる。(日本でも)戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と。

 その通りだ。麻生氏の認識は正しい…が、ふざけるな。

 彼はこの後で、〃抑止力〃強化の必要を説いていた。概算要求で過去最大規模となる防衛費を計上し、中国本土を狙える長距離ミサイルの量産などを打ち出した防衛省の動きとピタリ符合する。要は戦争に備えろという話である。

 麻生氏の主張には、しかし、肝心な問題がすっぽり抜け落ちている。台湾有事がなぜ日本有事にされなければならないのか、の因果関係だ。

 中国と台湾との紛争に、本来、日本は直接の関係がない。なのに戦争になるというのは、そこに米軍が介入したがるせいだ。沖縄の米軍基地から攻撃を仕掛けるつもりだから、中国軍の反撃を日本に招き入れてしまうのである。

 この点を明確にした上で、では沖縄を戦争に巻き込まないためにはどうすればよいかを熟慮し、行動するのが、日本の政治家のあるべき仕事ではないか。ところが麻生氏は戦争を与件として捉え、まるで面白いゲームでもあるかのような言葉であおり立てるばかりで、たとえば米国に中国を挑発する行為を控えるように求めた形跡もない。彼に限らず、政権与党の全員が同様の行動原理しか持ち合わせていない点が問題であり過ぎる。

 自民党が政治権力を握り続ける状況では、私たちはそう遠くない将来、ちょうど今のウクライナのように、米国による代理戦争の当事者にさせられていく運命が必定だ。アメリカのポケモンをむしろ積極的に志向する政治の、何が保守か。愛国なのか。