「働く」はみんなのもの

 

  ウーバーイーツな世界(6)

「企業外にせり出す「自己責任主義」のツケ

 

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 ウーバーイーツの自己責任路線のツケが、ついに税や法令など企業外にまでせり出してきた。そう感じさせる事件が相次いでいる。

 この6月、東京国税局がウーバーイーツジャパンに配達員の報酬などについての情報提供を求めていることが報じられた。新型コロナウイルスの感染拡大で需要が増えた労働者の税の捕捉に、国も乗り出した形だが、「個人事業主」扱いなので確定申告が必要だ。

 これについて同社は、契約の際に確定申告の義務があると説明し、申告の時期にはメールで啓発動画を案内しているとする。だが、これほど労働者性が強い働き方なら、会社が責任を持って申告の際の支援サービスなどを行うべきだという声も、働き手から出ている。課税だけではない。

 今年2月には、在留資格が切れて就労できなくなったベトナム人男性がウーバー配達員として働き、入管難民法違反で大阪地裁から懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡された。

 男性は技能実習生として日本の建設会社に働きに来た。低賃金と過酷な仕事に耐えかね、借金を抱えて帰るに帰れず、留学生からアカウントを買って登録したという。不正の続発の指摘を受け、昨年末、ウーバー側も、ネット上だけの手軽な登録から対面手続きに切り替えた。

 そうした中で今年6月、特別永住者であるウーバーイーツユニオンのメンバーのアカウントが突然停止(事実上の解雇)された。ユニオンによると、特別永住者には就労の制限も特別永住者証明書を提示する義務はない。技能実習生事件による勇み足だろうか。

 究極の自己責任の果ては、課税強化も法令違反対策も働き手の負担依存? 

 一連の事件からは、そんな疑問がわいてくる。