昭和サラリーマンの追憶

オリンピックをTVで見て思った。 

 

      

 

           前田 功


 こちとらも歳取って、物忘れがひどくなったが、テレビや新聞の連中も物忘れがひどいんじゃないか。

  

女子の体操って、23年前、パワハラで大騒ぎしたはず。あのときパワハラ受けた女の子は、どうなったんだろう。パワハラした方の体操協会のボスだった夫婦はどうなったんだろう。

レスリングでもボクシングでも、似たようなことがあった。

しかし、最近のテレビや新聞には、そんなことまったく出てこない。マスコミの物忘れもすごいもんだ。

 

ネットで調べてみたら、体操のその女の子(宮川紗江)はオリンピック選手には入っていない。日本体操協会のHPを見ると、パワハラした側の塚原夫婦は、光雄氏が顧問、千恵子氏は評議員で残っている。そして、役員一覧表の注に「評議委員会が役員・監事を決定する」とある。日本体操協会は、あの当時批判された体質を残したままだ。 

レスリングについても、パワハラされた伊調馨は引退していて、マスコミではほとんど見かけない。パワハラした方の栄和人氏は、騒ぎで日本レスリング協会の強化本部長やレスリングの名門至学館大学の監督を一度辞任したが、しばらくして至学館大学監督に戻っている。「そもそも伊調さんは選手なんですか?」と言って日本中を怒らせた谷岡郁子氏はその至学館大学の学長&理事長のまま。 

日本ボクシング連盟も無茶苦茶な組織で、「奈良判定」などという言葉も流行り、マスコミで大騒ぎだった記憶がある。調べてみると、張本人の会長だった山根明氏やその息子は組織から追放されている。

 

このような騒ぎを受けて、国(スポーツ庁)は、20197月に、中央競技団体を対象としたガバナンスコード(管理指針)を策定・公表している。そこには、各団体は通報制度、懲罰制度、危機管理及び不祥事対応体制、などを定めなければならないと記載されている。これにより、日本スポーツ協会・日本オリンピック委員会・日本障がい者スポーツ協会の加盟団体は、このコードの適合状況について、毎年、自己説明及び公表が義務付けられ、4年毎の適合性審査を受けなければならなくなった。 

五輪に熱狂するのもいいが、五輪の陰でスポーツそのものが歪められて行っているのではないか。

 

ネットを彷徨っていたら日本学術会議が、「科学的エビデンスを主体としたスポーツの在り方」というレポートを昨年6月に出しているのを見つけた。

「スポーツの語源は 15 世紀以前のラテン語dēportāre、すなわち『気分転換』にあるが、現代ではもっぱら、激しい肉体活動や競技を意味するようになっている。それは、ごく限られた環境の子どもたちしかオリンピックやパラリンピックの選手を目指せないという日本の現状に、象徴的に示されている。選手経験のあるスポーツ関係者や保護者は、その経験ゆえに、幼少期から厳しい練習をしなければ一流になれないという気持ちが強く、よい成果を出すには長時間の練習が必要だと考えがちである。科学的エビデンスではなく、自身の経験を重視してきたことで、スポーツ界は、指導者の身体的・精神的暴力といったハラスメントを生みやすい風土にある。」

 

こうしたスポーツ界特有の体質を許す背景には、「スポーツはそういうもの」という諦めに近い「社会の容認」があるのではないか。 

メダルをとった選手たちは、インタビューで「関係者の皆様のおかげ」と言う。彼や彼女が日本代表になるために、その「関係者の皆様」が何をしたか。特に、上記3団体では、世間を騒がせたパワハラ事件があったのだから、その「関係者の皆様」に覚えめでたくない選手らが「関係者の皆様」からどんな目にあわされているのか、いないのか。代表選考の際の判定に疑義はないのか。判定員に圧力は加わっていないか。そんな点について取材し、報道するのも、マスコミの仕事ではないか。メダルをとった選手を褒めたたえるだけでは興行師の手先でしかない。 

日本選手の勝ち負けに熱狂するだけではなく、こういうことを考えながらテレビ観戦すると、また違った興味が湧いたのでは?