松久 染緒 「随感録」


北朝鮮の国民に日本からコメを送ったらどうか

 

 現在日本の食糧備蓄基準はコメが100万トン、小麦は食料用需要額の23か月分となっており(農林水産省)、このほかJA及び卸売業者の民間備蓄米が280万トンあり、コメだけで380万トンある。この中から食糧支援として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の飢餓難民あてに、たとえば100万トンを拠出したらどうだろうか。こういうと「いったい何を考えているのか。ミサイル発射で今我が国に対する最大の恫喝・脅威をもたらしている国だ。拉致被害者問題が一向に解決していないではないか、とんでもない」の非難ごうごうとなるだろう。「中国に任せればいい」あるいは「食糧支援で万景峰号の再開を図り、交渉の糸口とする手もあるか」など、うがった見方をする向きもあるかもしれない。

国土面積12万㎢の北朝鮮には2,515万人が住んでいるが、その43%に当たる1,100万人が食料不足という。北朝鮮では年間550万トンから600万トンの食糧を必要とするが、2018年には異常気象により食糧生産が490万トンに減収した結果、その後今日まで依然数百万人が飢餓状態といわれている。国民一人当たりのGDP1,700ドル(日本は40,146ドル、韓国は31,496ドル)と極端に低く、食糧は一日当たり300グラムの悲惨な状況といわれている。その一方で体制の維持・継続を至上命題とする金正恩委員長は、食糧危機の時期でも警官には40キロのコメ、200キロのトウモロコシ、秘密警察には80キロのコメ、200キロのトウモロコシなどそれぞれ1年間分の食糧を確保したといわれている。

国民の生存・生活の維持・継続は、もちろんその国の政府の一番の仕事である。国民が食べるものを食べ、着るものを着て、住む場所を得るのは国家存続の必要最低限の条件だ。

このような世界の最貧国に対しては、もちろん国連の世界食糧計画(WFP)は食糧支援を行っており、2019年には同国208郡のうち107郡に入って支援した。当初、北朝鮮は海外団体の自由行動を認めず事前の連絡なしの視察は拒否していたが、背に腹は代えられず、国連のノーアクセス・ノーフードルール(モニタリングの受け入れなければ食糧支援なし)を受け入れざるを得なかった。しかし飢餓状態は改善していない。

ところで世界の食糧自給率は、トップのカナダが255%(カロリーベース)・120%(生産額ベース)、米国131%・90%、仏130%・83%、独95%・66%、英68%・60%などとなっているなか、わが国は38%・66%と低迷している。

それでも食糧支援を提案する理由は、飢餓難民の救助以外にあり得ない。隣国で数百万人が体制維持の犠牲となり、日々飢えて死んでいくのを座して見逃すことはできない。といっても金んが受け入れるとえないし、万一受け入れても飢餓難民に行きる保もない。金朝の自己崩壊待つしかないともいうがそれでは国民はわれない。外交やメンツにこだわる日本政府がやれるはずはないが、外国有志連合あるいは民間連合でもNPOでもいいが、純粋に人道的な観点から何とか食糧支援ができないだろうか。