北 健一 「経済ニュースの裏側」


サンケン争議と株主逮捕 

 株式会社の最高意思決定機関は株主総会だ。

 東芝の株主総会が6月25日に開かれ、取締役会議長と監査委員の2人が再任されないという波乱があった。昨夏の総会に関わって、東芝と経済産業省が手を結んで海外ファンドに圧力をかけたことが外部報告書で明らかになり株主の不信が募ったのだ。

 東芝と同じ6月25日、サンケン電気の株主総会が埼玉県新座市の本社で開かれた。

 同社は今年1月、子会社の韓国サンケンを廃業し従業員らを解雇。他の工場での生産を計画しているため、「偽装倒産」との批判が起き労働争議となった。韓国サンケンは2016年にも35人を解雇したが、246日目に解決、全員が職場復帰した。

 今年の株主総会の日も、東京清掃労組、連帯ユニオン、東水労、東京東部労組などが本社前で株主に争議解決を訴えたが、支援の会の中心メンバーで株主でもある尾澤孝司さんの姿はなかった。5月10日、本社前で逮捕され起訴、勾留されているからだ。

 韓国労働委員会の和解勧告にもかかわらず、同社は組合との対話の扉を閉ざしたままだ。尾澤さんは申し入れ書を渡そうと受付に向かったが警備員に阻まれ、押し問答に。通報で、警察官が駆けつけ、なぜか現行犯逮捕された。

 起訴状によると、尾澤さんはプラカード様のもので警備員を押し仕事を妨げたというのだが、共に支援運動に携わる連れ合いの邦子さんは「容疑はでっち上げ。労使問題に警察を介入させるのはおかしい」。支援者の女性も「尾澤さんは温厚な人で、暴行などまったく考えられません」と話す。

 尾澤さんを弁護する浅野史生弁護士は「親会社に解決を求めるのは正当だし、暴行など存在しない。仮に起訴状に書いてあることを前提としても、突発的で警備員にけがもなく、およそ起訴価値などない。闘争つぶしが目的ではないか」と説明する(「レイバーネットTV」6月16日)。

 取材に対しサンケン電気は「答えるつもりはない」とした。逮捕がなければ、尾澤さんは株主総会で、韓国サンケンの廃業・解雇問題を問うていたはずだ。株主の申し入れを「事件」に仕立て総会に出られなくしたのだとすれば、株主総会のあり方としても重大な問題を含んでいる。