「働く」はみんなのもの

 

   ウーバーイーツな世界(5)

   「指針が出来た」で解決なのか

 

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 この3月、フリーランスを保護する指針ができた。ウーバーイーツの配達員も対象になる。だが、それでめでたし、なのだろうか。

 フリーランスは、事業主と労働者の中間的存在だ。このため指針ではまず、「事業主」としての保護へ向け、「発注企業の優越的地位の乱用」を規制した。取引条件を明確にした書面の未交付や、立場の強さを利用した不公正な条件の押し付けなどを、独占禁止法や下請け法で防ぐ方法だ。

 発注企業の指揮監督下で労働するなど労働者により近い場合は、労働基準法や労働組合法などによる保護が適用されることも明確にした。ウーバーイーツの配達員は、会社側から行先を指定されるなど強く管理され、この要素が強い。

 これらは確かに前進だ。だが問題は、日本では「労基法が適用される条件」が、きわめて狭いことだ。

 「賃金が払われ、指揮命令されていれば労働者」という要件は、一見、単純に見える。だが、高価なトラックを自力で買って仕事をしている場合は「自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う『事業者』としての性格が強く、『労働者性』を弱める」(1985 年労働基準研究会報告)など、さまざまに条件がつけられているからだ。

 また、ウーバーイーツでは「アカウントの解除」という一方的な仕事の打ち切りが問題化しているが、指針では、契約の打ち切りについての規制もない。

 指針は、セーフティネットにも触れていない。前回述べた配達員の労災保険は9月から導入されることになったが、これは従来のような会社負担でなく、働き手の自費負担なのだ。

 「指針」で安心してはいけない。本当に現場に根差した指針へ向け、早急に動き出す必要がある。