斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

        五輪一色NHKの不可解人事

 

 

  NHKは東京五輪を総合、Eテレ、BS1、BS4K、BS8Kの5チャンネルで合計1200時間放送する。6月28日に発表された放送計画によると、地上波は過去最大の430時間。特に総合放送は朝8時過ぎから翌日午前零時まで、時折ニュースが挟まれる以外はぶっ通しで五輪中継になるという。

 これにラジオ第1放送とネットの特設サイトが加わるのだ。つまりオリンピック漬け。いよいよ国営放送、いや新型コロナ禍における開催そのものを恐れ、依然として中止を求める声が多数派を占めている状況に照らせば、これはもう「自民党放送局」の呼称こそがふさわしい。

 ――そんなことを考えていたら、毎日新聞(6月28日付朝刊)が、NHKの異様きわまりない人事を報じた。同局の前田晃伸会長(76)がさる4月、板野裕爾専務理事(67)を退任させる役員人事案を経営委員らに郵送させたのに、すぐ撤回し、再任させる案に差し替えたという。

 役員人事は最終的に経営委員会の場で決定される。したがって今回は板野再任の案だけが示され、同意が得られた。

 強い圧力の介在を推察せざるを得ない。いったい何があったのか。

 板野氏は報道畑の出身。経済部長などを経て、2012年に理事に就任した人物だ。この頃から首相官邸と深い繋がりを持ったと言われ、14年に放送総局長(専務理事)のポストに就くと、15年の安全保障関連法案に関する複数の放送を見送らせ、また16年には「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターの降板にも関与したとされる。問題の所在は、すでに明らかなようである。

 7月のNHKは、開幕前から五輪一色だ。「自民党放送局」にもはや公共放送を名乗る資格はない。単なる国民洗脳機関である。NHKには少なくなかったはずの、心ある放送人たちは今、何を思うのか。