市民の声で世界を変える

 

     目加田 説子さん

 (地雷廃絶日本キャンペーン副代表)

 


 今年1月に核兵器禁止条約が発効しました。対人地雷禁止条約の署名(1997年)から始まった非人道的兵器をなくそうという流れが、また一つ結実したのです。市民が声を上げれば、世界を変えられることを示していると思います。

 私は25年前から、対人地雷を禁止する運動に携わっています。当初は米国やロシア、中国などの大国は禁止条約の制定に反対していました。しかし、カナダやノルウェーなどの国々や国際機関、そして市民の運動の力で条約を制定することができました。

 97年にはこの取り組みを主導した地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)がノーベル平和賞を受賞しています。他の非人道兵器を廃絶するモデルになる、というのが理由でした。実際、2008年にはクラスター爆弾禁止条約が成立し、今度の核兵器禁止条約採択につながっています。

 これら3条約に共通しているのは、国家の安全保障より人々の安全保障を重視する考え方で、被害者の救済をうたったのも特徴です。「人道的軍縮」と呼ばれています。

 対人地雷やクラスター爆弾では、保有国が批准しなくても、条約発効によって「非人道兵器は駄目」という規範が確立し、使用や生産を禁止する効果が生まれました。これらの非人道兵器を製造する企業などへ投資をしないよう迫る「ESG(環境・社会・企業統治)投資」の取り組みも広がっています。

 人道的軍縮の流れは、ボトムアップ型でつくられました。市民が声を上げ、それが集積されていく中で変化を起こしたのです。世界は変えられます。一見難しそうな核兵器廃絶についても諦める必要はありません。特に若い人たちには、勇気を出して声を上げ、行動してほしい。

 

 めかた・もとこ 2004年より中央大学総合政策学部教授。地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)の創設メンバーの一人。TBS「サンデーモーニング」のコメンテーターも務める。