薄氷を踏む毎日


守屋真実

 もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 


 とうとう私の職場でもコロナ感染者が出てしまった。

 マスクをさせても引きちぎってしまったり、手洗いやうがいもできない知的障がいのある子どもたち相手の仕事だから、いつかは来るのではないかと思っていたけれど、アルバイトスタッフの一人から「PCR検査陽性でした」という連絡があった時には、やはりみんな絶句してしまった。

 昨年の一斉休校の時には利用児童が半減し、このままでは経営が立ちいかなくなるのではないかと心配した。経営者が良心的な人なので、日に日に痩せていきながらも笑顔を絶やさず、融資という名の借金に奔走してくれたおかげで誰も失職することなく乗り越えられたが、当てにしていた学生アルバイトが帰省したまま帰ってこなかったり、子どものいるスタッフが退職したり、子どもたちは訳が分からないまま学校がなくなって荒れてしまったり、本当に目の回るような一年余りだった。ここで二週間も事業所を閉鎖しなければならなかったら、本当に倒産していたかもしれない。幸いスタッフも利用児童も濃厚接触者にはあたらないという保健所の判断で休業しなくて済み、実際に誰も発症せず、また感染した人も無症状のままで事なきを得たが、改めて薄氷を踏む毎日だと実感させられた。

 保健所からの連絡待ちの間、さすがに金曜日の集会は大事をとって控えた。それだけで、なんだかすごく生活が規制されてしまったように感じた。二週間も自宅やホテルに閉じ込められたら、どんな気がするだろう。

 国民の多くがこんな綱渡りの生活をしている時に、何がオリンピックだ!オリンピックに使う税金は、生活困窮者や中小企業、個人事業者に回せ!3000人もの医療従事者を動員する余力があるなら (あるはずないけど)、一年半近くも過労死ラインを越えて頑張ってきた人たちに交代で休暇を取らせてあげればいいじゃないか!スポーツを国威発揚のために使うな! 

 6月18日は、新宿で行われた「オリンピック中止デモ」に参加してきた。雨と猛烈なビル風の中、一時間半近いデモ行進は疲れたけれど、沿道から拍手を送ってくれる人、ドラムに合わせて踊りだす若者、飲食店から出てきて手を振ってくれる人など手ごたえが感じられた。

 「国民の安心安全」を繰り返すだけの人が首相をしている限り、国民が安心して暮らせる世の中にはならないことを多くの市民が気付き始めている。都議選は間近だ。なんとしても市民の怒りを政府に、都知事に見せつけたい。