「働く」はみんなのもの

 

   ウーバーイーツな世界(3)

     事故責任は自己責任

 

 

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 「料理の配達」というウーバーイーツの仕事は、交通事故がつきものだ。一般には、このような事故を労働災害とすることで働き手は守られる。だが、ウーバーイーツな世界では「事故責任は自己責任」の仕掛けが張り巡らされている。

 ウーバーイーツユニオンが昨年7月21日付で発表した事故調査プロジェクト報告書では、回答29人中、公表を承諾した28人から計31件の事故が報告され、「頸椎捻挫や靭帯損傷など」「骨折」という重傷もそれぞれ19%あった。

 事例から見えてくるのはまず入職前の情報提供不足だ。配達員向けのガイドには事故についての記述が極めて少ないからだ。

 さらに、事故を誘発しやすい配達システムがある。配達先の住所が不備な場合でも、配達員は自力で探さねばならず、遅れた場合の「アカウント停止」(すなわち仕事からの締め出し)を恐れて焦るからだ。

 事故発生時に支えるはずのサポートセンターは、連絡してもすぐにつながらないことが多い。

 外部の人が事故に遭遇した場合も、会社側への通報窓口は公開されていないため、対応は配達員に丸投げされる。

 事故によってアカウントの停止または警告を受けたのは25%だが、処分理由の説明はない。「懲戒処分」が公正・透明性抜きで行われていることになる。

 事故での障害に見舞金制度はある。だが、対象は配達中に限られ、上限は25万円。重傷で入院するようなことになれば、とても足りない。「サポートセンターに相談したら、申請するとアカウント停止になると言われた」といった対応の不備もあった。

 会社は配達を命令するが結果については配達員が引き受ける、という究極の片務世界が浮かんでくる。