昭和サラリーマンの追憶

「接待」でなく「会食」を禁止せよ

      

 

           前田 功


 何故?どうして?

 東北新社やNTTによる官僚や大臣への接待について国会で追及。疑惑を持たれているからこそ追及されているわけだが、追及される側の官僚や大臣は、「疑惑を持たれるような会食を行なったことはない」と言い、話がかみ合わない。

 会食の場に出たことは認めても、自分もいくらか払ったから疑惑を持たれるようなことはないとか、その際、認可にかかわる話がされたかどうかには、わざわざ「記憶にございません」と答えている。(「記憶にございません」という言葉は、何十年も前のロッキード事件以来、永田町・霞が関界隈では、「言いたくありませんが、その通りです」ということを意味する。)

 どんな経緯で、その「接待」を受けるようになったのか。なぜ何回も、受けたのか。

 何回も受けたいほど、あなたの役に立ったのか。

 これらについて、全然説明がされていない。

(追及もポイントがずれていたが・・・。)見ていてイライラした。 

 カネを払わなかったことがいけないのか。7万円かかったのに、官僚は5000円しか払っていないからいけないのか。酒食の場で、頼みごとがされていなければいいのか。

 

 本当の接待とは

 接待する側はなぜ接待するか。「仲良くなる」「好感を持ってもらう」ためである。仲良くなれば、好感をもってもらえば、その後、仕事のことも頼みやすい。無理も聞いてもらいやすい。難癖をつけられない。

 そのためには、相手に気分よく楽しんでもらわなければならない。精神的に負担をかけさせないこと。相手にそれとわかる「下心」を見せたり、「見返り」を期待すると、逆効果だ。相手にこちらの目的を飲んでもらおうという意図が透けて見えてしまったら、相手の気分を悪くするだけだ。

 

 私も現役時代、会食やゴルフで接待したりされたりの経験がある。ただ、するにしてもされるにしても、その場でお願い事の話をすることは一度もなかった。

 接待した相手から、「今日は非常に楽しませてもらった。だから、今日は俺に払わせてくれ」と言われたことがある。「いや、そういうわけにはいきません。」と押し問答はしたが、結局相手に払ってもらったことがある。翌朝、自社でそのことを上に話すと、「馬鹿もん」と怒鳴られたが、これこそ接待の成功だと思った。どちらがカネを払うかはたいした問題ではないのだ。大事なのは喜んでいただくことだ。

(お願い事は日を改めて、「先日はどうも・・・。ところで、○○の話ですけど、今日お伺いしますので、よろしく・・・」と電話する。それが一番有効だった。)

 

 メリデメで考えると

 顔つなぎだけか、それ以上か、よきにしろ悪しきにしろ、東北新社やNTTが総務省を接待しようとしたのは納得がいく。官僚たちは「利害関係者とは知らなかった」ととぼけているが、「知らない」はずがない。

 この時節、彼らが東北新社やNTTの接待を受けたりするのは、あまりにもやましすぎる。食事やワインがいかに高価であったとしても、いや、むしろ高価であるが故に、リスクが大きすぎて官僚側のメリットに見合わない。普通ならこの接待は断っているはず。官僚はルールとリスクには非常に敏感だ。彼らはメリデメを計算できる。それにもかかわらず、この一連の問題は起きている。

 彼らにはリスクを冒してでも得ようとしたメリットがあった。

 それは何か?菅義偉が権力を握っている限り、それを官僚の口から聞くことは難しい。

 総務省は菅の直轄領だと言われている。菅は総務副大臣か総務大臣の時、気に食わない課長を「飛ばしてやった」と豪語している。

その菅が首相なのだ。その菅の息子に求められては、官僚たちは断るわけにはいかない。そして彼らは、断るどころか、この機会を利用しようとその場に向かった。

 菅に良い印象を持たれて(あるいは「悪い印象を持たれることを回避して」)自分の人事に関するメリットを得たかった。将来に備えて超一級の天下り先との人間関係を作っておきたかった。政策的な根回しをうまくやりたかった・・・・。

 彼らから見て彼ら個人個人にとって大きなメリットがあるということなら、「接待を断らない」以上のメリットを東北新社側やNTT側に与えていてもおかしくない。

 行政がゆがめられた可能性は大いにある。

 

 利害関係者(あるいは利害関係者となる可能性のある者)との「会食」は禁止

 接待であろうとなかろうと、酒食をともにしつつ語りあうことは、心開き合う関係が構築される結果を生む。

 割り勘だろうとなかろうと、「一緒に飲み食いしたことのある業者」vs「したことがない業者」では、仲の良さ&好感度において、前者に利がある。公務員倫理規程や大臣規範でも、「疑惑を受けるような接待はダメ」では不充分で、利害関係者及び利害関係者になる可能性のある者との「会食」は一切禁止、とすべきである。そうしなければ、不公平だ。