雨宮処凛の「世直し随想」

            多くの人生を変えた1年


 新型コロナウイルス感染拡大が始まり、1年以上。

 私たちの生活はコロナ以前とは大きく変わった。思えば、第3波が始まる前から会食に行っていないし、緊急事態宣言が発出された1月以降は仕事や活動以外で外に出ることもだいぶ減った。ひたすら家にこもり自炊する日々。「友人と会ってバカ話」とか「ビジュアル系バンドのライブに行く」などの気分転換から遠ざかってもう1年になると思うと、時々「もう無理!」と叫びそうになる。

 だけど、「文化・芸術」を担ってきた人たちはさらに厳しい中にいる。「いつかライブに行ってみたい」と思っていたバンドのいくつかが解散や活動休止に追い込まれた。老舗、ビジュアル系の聖地ともいわれたライブハウスの閉店が発表された時は、自分でもびっくりするほど落ち込んだ。

 今、いろいろ我慢しているけれど、コロナ禍は私が好きな世界をすべてつぶし尽くしてしまい、終息したって楽しいことなんか何ひとつないのかもしれない。そう思うと、今の「我慢」が途端にバカらしくなったりもした。それだけじゃない。バンドメンバーの中にはホストに転身した人も何人かいる。「夜の街」が敵視される中、生きるために夜の世界に飛び込む人たちがいる。

 新型コロナウイルスは、感染した人だけでなく、あまりにも多くの人の人生を変えてしまった。もう、マスクをせず、「密」を気にしないコロナ以前の世界にリアリティーがない。何を目的に今を乗り切ればいいのか、見失いつつあるコロナ禍の1年。多くの人が同じ戸惑いの中にいる。