雨宮処凛の「世直し随想」

            使える「生活保護」に


 「親きょうだいに縁を切られた」「DVをしていた父親のことがよみがえってフラッシュバックに苦しんだ」「娘に今の状況を知られたくない」

 生活保護の扶養照会を巡り耳にした言葉だ。生活保護を申請すると、役所から家族に「金銭的に面倒をみられませんか?」と連絡がいく。それが扶養照会。

 が、「家族に知られたくない」と、扶養照会が壁になって申請を諦める人もいる。一方、家族といい関係であっても、扶養照会がなされてしまったことで「親やきょうだいが激怒し、縁を切られた」という話もある。

 家族によるDVや虐待があった場合、本来であれば扶養照会はされないことになっている。それでも照会されてしまい、「親に居場所がばれた」「ずっと封じ込めていた過去の嫌な記憶がよみがえって精神的に不安定になった」など、「被害」報告は枚挙にいとまがない。

 ちなみに扶養照会によって実際に金銭的援助などがされているのかといえば、答えはノー。仕送りなどがされたケースはわずか1・45%だという。

 そんな扶養照会を見直すよう、厚生労働省に2月8日、署名が提出された。

 本人の承諾があり、扶養が期待できる場合のみに限るという通知を出すよう求めた要望書も出された。はからずも、国会でもこの問題が注目される今だからこそ、そしてコロナ禍で多くの人が生活苦に直面しているからこそ、見直されてほしい。

 安心して使えて初めて、生活保護は「権利」となるからだ。