雨宮処凛の「世直し随想」

            「公助」に本気を! 


 この原稿を書いているのは、新型コロナ第3波が猛威を振るう中。読まれる頃には少しでも収束に向かっていてほしいが、なかなか難しいかもしれない。何しろ第3波の中で国が強調している対策は「マスク会食」。医療崩壊が叫ばれているというのに、来年6月までの「Go To」キャンペーンの延長も発表された(批判を浴びてその後手直しされたが)。どれもこれも正気の沙汰とは思えないやり方だ。

 思えばコロナ禍が始まってから、国から「安心感」を得たことは一度もない。3月、ドイツではコロナ禍を受けて貧困がまん延することを見越した担当大臣が「遠慮せず生活保護の利用を」と人々に呼びかけていた頃、この国では「お肉券」や「お魚券」が検討されていた。

 コロナの疑いがあっても保健所にはまったく電話がつながらず、自宅で亡くなる人が出ても、国が打ち出したのは「アベノマスク」。自殺者が急増し始めた頃、新首相になった菅氏は「自助」ばかりを強調した。そして第3波での「マスク会食」。不安要素しかない現実が地味につらい。

 私も参加する「新型コロナ災害緊急アクション」では4月から困窮者支援を続けているが、SOSがやむ気配はまったくない。

 「4日間、何も食べていない」「寒くなり野宿がきつくなってきた」。そんな人々のもとに今日も支援者が駆けつける。これまで千人以上に対応し、寄付金から4千万円以上を支援してきた。民間のボランティアが数千万円規模の支援をしていること自体、異常なのだ。公助のトップに、「死なせない」という本気を望む。