天野 ともよ 「潮風短信」


あの人、なかなかやるもんだわね

 いい人ぶって腹黒い同僚

 入社15年目、営業2課のKちゃんが「ああ、悔しい!やられたわ~!」と言いながらランチに遅れてきました。

 「何なに?!どうしたの?!」と聞くと、同じ課にいる派遣社員Y子さん(49才)のことだった。

 派遣社員として2年目、いろいろな会社を渡り歩いているだけあって目から鼻に抜けるというか、大体のことは卒なくこなしてくれるので助かる存在ではあるそうだ。

 しかし、いい人ぶっているが実は腹黒いというのがKちゃんの評である。たとえば、Kちゃんの後輩で入社4年目のR美さんへの対応だ。R美さんは、ちょっとそそっかしいところがあって細かいミスが多い。それを逆手にとってY子さんは自分の方が仕事ができると上司にアピール。挙句の果てには自分の失敗にも関わらずR美さんのせいであるようにスルリとかわしていく。自分の都合が悪くなりそうなメールには返信をしない。気に食わないことがあると誰々さんはこんなメールを寄こします!と自分のブラックな発言部分はうまく削除した上で上司に転送するのだそう。

 「へぇ、やるじゃんね。で、Kちゃん、あなたはどういうふうにやられたの?」

 「今日はさー、部長が二つの代理店さんにそれぞれ違った手土産を配ることになっていて、私が二種類手配したの。で、代理店さん宛の手紙はY子さんが作成し、手土産とセットにしてY子さんが代理店さんに渡すことになっていたの。ところが彼女、渡す際に取り違えてしまったのよ。二種類あることもY子さんはわかっていて、私が準備しますと言っていたから任せたらこの有様よ。まさか、部長にY子さんが間違えましたとも言えないしね~。最後にチェックが足らなかったといえばそれまでだし。でも自分でやりますって言ったんだから責任もってやってもらいたいわよ。悔しいわぁ!いい人のフリをしながら、あざとく立ち回る人っているのよね、ぱぱっと計算して自分は悪くないようにかわせるってすごいけど、結果としてそれが見えちゃうと、信用ならないなーって思えちゃう。そこまでして自分の身を守るのっていやよねー」

 Kちゃんは、そう言ってランチもそこそこに職場に戻っていった。

(写真も天野)