曽田 英夫 てつどう歴史散歩

 

     第1回 「汽笛一声 新橋を」


 

 今回から伴さんのご依頼により原稿を書くこととなりました。筆者は元損保マン。61歳まで39年間は自動車保険、火災新種保険の支払いと求償が主たる業務でした。もちろん労働組合にも力を注ぎました。

 そのあと9年間はやっぱり保険は保険でも健康保険の求償事務をさせていただき、平成とともに退職しました。一方で就職してからずっと鉄道運輸史の研究を続けました。今鉄道ファンを親しみをこめて「鉄ちゃん」と呼び、「乗り鉄」「撮り鉄」「ママ鉄」などと分類されていますが、小生の場合は「歴鉄」と言うことでしょうか。仕事も一生懸命やりながら、『列車名徹底大研究』『幻の時刻表』『発掘!明治初頭の列車時刻』など著書を多数出版させていただきました。

 今回、それらを踏まえて鉄道の歴史を追ってみようかなと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

 

 第1回は鉄道が開業した時について書きます。今も10月14日は「鉄道の日」となっています。それは鉄道が始まった日です。今から148年前の明治5年(1872)10月14日(太陰暦9月12日)に新橋(後の汐留)~横浜(現在の桜木町)間に鉄道が開業するのでその開業式が挙行されました。当日、明治天皇は新橋10時発のお召し列車で横浜へ。横浜で式典を挙行された後、横浜12時発の列車で東京へ向かわれ、東京での式典を挙行しました。

 翌10月15日より運転が開始されました。

 その時刻表は次の通りです。    

 新橋~横浜間は1日9往復、所要時間は53分でした。それまでは1日がかりで歩いていたものが、1時間もかからないうちに到着したので、誰も降りなかったという逸話が残っています。現在の京浜東北線では、新橋~桜木町間は約39分となっているので、予想以上に早かったと言えるでしょう。

 

 実は、これより早く、明治5年6月12日(太陰暦5月7日)に品川~横浜間で仮開業しており、当日は品川発9時、17時 横浜着9時35分、17時35分、横浜発 8時、16時、品川着8時35分、16時35分の2往復でした。したがって、横浜発8時の列車が我が国で最初に運転された列車といえます。鉄道は人気があったのか、翌日から6往復となるなど、開業直前には8往復まで増発されています。そして、上記のように正式に開業しました。