松久 染緒 「随感録」


           

 

          そうなっているならこうする

 日本はいま世界の中でどの辺に位置する国なのでしょうか。教育社会学の本田由紀東大教授の「日本ってどんな国」によれば、国際比較データでは次のようになっています。

 1.ジェンダー

 ジェンダー(社会的、文化的につくられた性別による違い、いわゆる性的マイノリティーLGBTQも含まれる。)について、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数の総合ランキングでは、日本は156か国中120位です。国会議員に占める女性比率は、OECDの37か国中、最下位の10%、企業の管理職に占める女性の割合は、OECD33か国中、同じく最下位の15%です。(2019年)

 2.学校教育

 一学級当たりの平均生徒数は、OECD33か国中、日本の公立小学校が27名、中学校が32名で、いずれも世界で最多となっている。また、中学校教員の週当り労働時間は、48か国中最多の56時間で、米・英国は40時間台、フランス・スペインは30時間台、ブラジル・サウジアラビアなどは20時間台となっています。

 コンピュータやインターネットの活用が非常に遅れており、情報通信技術の研修の必要性を訴える教員の数がベトナムに次いで2番目に多くなっています。

 3.経済・仕事

 世界の企業の株の時価総額について1989年と2019年とを比較すれば、1989年のトップ50社に占める日本企業の割合は32社で、上位5社はNTT、興銀、住友銀、富士銀、一勧銀となっており、トヨタは11位でした。ところが2019年にトップ50社に入っているのは43位のトヨタ1社のみというありさまです。2019年のトップはアマゾン。

 経済的業績、政府の効率性、ビジネスの効率性、社会基盤という4カテゴリー別指標に基づく世界の競争力ランキングでは、1990年には1位だった日本が、2020年には34位に大きく後退しています。日本経済はすでに凋落して久しいのです。さらに長時間労働の割合が先進国で一番高く、正社員対比の非正社員の賃金水準は、正社員フルタイム雇用を100とした場合の割合は、英国、ドイツ、オランダが70、フランス、デンマーク、スェーデンが80に対し、日本は56と極端に低い。仕事を選択する場合に何を重視するかにおいては、米国および中国、韓国、インド、ベトナムなどアジア諸国がすべて「高い賃金・充実した福利厚生を求める」のに対し、日本では「良好な職場の人間関係を求める」となっています。

 4.政治・社会運動

 自分が目指す社会や生活の在り方を実現しようとして他者に何らかの働きかけを行う社会運動と、政治への参加はどうか。まず政治参加の基本である投票率です。先の衆議院総選挙では、戦後3番目に低い55.9%でしたが、2014年の衆議院選挙では52.6%で、200か国中150位でした。今でもそのくらいの低水準でしょう。有権者全体の投票率は、1990年頃までは70%前後でしたが、このところは50%台に低迷しています。政治や選挙への他人ごと感が特に若者の投票率低下につながっています。

 内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識調査(2018年)」では、

「自国のために役立つことをしたい」YESは日本が47%、韓国38%、米国45%、英国40%、ドイツ54%、

「自国の政治に非常に関心がある」YESは日本が12%、韓国15%、米国32%、英国21%、ドイツ25%、

「社会問題の解決に関与したい」YESは日本が10%、韓国29%、米国43%、英国32%、ドイツ30%、

「自国の社会に満足しているか」YESは日本が5%、韓国6%、米国27%、英国18%、ドイツ17%、

「自国の将来は明るいと思うか」YESは日本が4%、韓国9%、米国32%、英国20%、ドイツ14%、

 またOECD PISAによる高校一年生対象の「生きる意味」の調査(2018年)では、一番高い指標0.60のパナマから、台北―0.27まで、OECD 平均0.02となっている中、日本は最低値の―0.40 すなわち「何のために生きているのかわからない」まま、日々を送っている若者が圧倒的に多いという深刻なことなのです。

 

 とすれば、私たちが取り組むべき課題は明らかになっているのではないでしょうか。すなわち、

 1.  あらゆる差別をなくし、男女平等いや人間平等に機会均等の社会を実現する。

 2.  政府に教育行政、情報通信業務への人材確保・増員に必要十分な予算を配分させる。

 3.  効率・成果への偏重から、働き甲斐・生活・健康・生存重視への働き方改革を進める。

 4.  若者の自由・闊達・明るい希望を持った生き方を社会全体で応援する体制を確保する。

 5.  憲法を遵守し、噓とごまかしの無い、事実と科学的根拠に基づく討論に基づき、政治家が信用される社会、国民全員が代表を選出するため投票に出かける世の中にする。