北 健一 「経済ニュースの裏側」


変化へ、若い世代の思い 

 国政はどうすれば変わるのか。総選挙の苦い結果に、改めて考えさせられる。

 先日、首都圏の私立大学で、ゲスト講師として授業する機会があった。受講者は約300人で、半分が1年生だった。

 テレビドラマ「半沢直樹」と「ハケンの品格」を素材に、日本の働き方の特徴と課題を話し、課題解決のためどうするかを考えてもらった。

 提示した「課題」の一つは、自分が非正規の契約社員という設定。社員食堂の定食代が正社員より高く、ボーナスも退職金も出ない。モヤモヤが募るが、どうしますか?

 学生の回答は、「会社に意見、要望を伝える」が65人でトップ。以下、「受け入れる」63人、「正社員をめざす」41人、「正社員になれる会社に転職する」39人と続いた。「労働組合に相談」は10人、「裁判や労働委員会に訴える」は6人だった。

 何らかの権利主張を考える学生が、今年は目立った。「契約社員を選択したのは自分だから文句は言えない」「正社員とはスタートラインが違う」といった回答ももちろん多かった。「中学、高校で理不尽なルールに慣れているから、黙って従う」という回答もあり、胸が痛くなる。

 他方、「同じ境遇の人と一緒ならば声を上げることができる」「何もしないで従うよりも、自分にとっても、未来の日本にとってもいいと思う」「SNSで抗議の意思を示す。それが力になる」などと書いたレポートも少なくなかった。

 飲食店でアルバイトをする学生は、子育て中の女性たちが非正規として働き、彼女たちがいて初めて業務が回ることにふれ、非正規差別の考えを捨て底上げを進めるべきだと、経験から述べた。ジェンダー平等と非正規差別の是正のつながりを再認識した。

 非正規社員へのボーナスや退職金の支払いが争われた大阪医科歯科大とメトロコマース、二つの労働契約法20条裁判原告への共感もつづられた。長すぎた新自由主義の下、共感と連帯の芽は生きている。

 彼女、彼らの声が生かされる職場、労使関係を広げたい。ものを言い、会社と話し、小さな改善を積み上げた先に、民主主義への信頼は深まっていく。自分が参加して実を結んだ身近な場での変化が、国政の変化にも、きっと結び付く。その日が遠くないことを。