投票立会人をやってみました

 

町田 富士彦


 先日の衆院選で投票立会人をやった。やってみてこれまで選挙について知ってるつもりでいたが、知らなかったことが多かったんだなと思った。読者の皆さんは知っていたことかもしれないが・・・。

 まず、「立会人」についてである。6時30分から20時30分の間、投票所である小学校にいなければならないという。近所に住む自治会(いわゆる町内会)の会長から頼まれたが、そんなに長く自由に動けないのは経験ないから、何度か勘弁してくれと断ったが、何とかお願いしたいと説得され、やむなく引き受けた。

 数日後、市の選管から何枚かの文書が届いた。それによって、報酬は15,800円、弁当は持参しなければならないこともわかった。

 過去の投票の際、投票所に座っている彼を何度か見たことがあったので、彼も「立会人」の一人なんだろうと思っていた。ところが、当日朝、「投票立会人」の腕章を渡され自分の左腕に付けた後、彼の腕章を見ると、「投票管理者」とある。あ、そうか彼と私は違うんだと初めて気が付いた。 投票所には公益代表として、「投票管理者」と「投票立会人」がいるのだということを初めて認識した。

 投票立会人は私ともう一人、その人は18歳の女性。投票管理者の彼の話では、この人は立会人を経験してみたいと選挙管理委員会に申し出た人だそうだ。その動機など聞いてみたいと思っていたが、一日中同じ場所にいたのに、彼女と話す機会はなかった。「立会人」も「投票管理者」も会場内で私語を禁じられている。少し早く行っておれば、彼女と話しすることもできたのだろうが、私は6時30分ぎりぎりに行ったので、まったく話す機会はなかった。休憩を交代でとっているためだ。

 10人余りいるスタッフもどういう構成かもわからないまま、投票開始時間の7時になった。市職員が、「最初の投票者の方に投票箱の中をご確認いただきます。投票管理者と立会人もご一緒にご確認願います」と言い、早くから待っていた一番目の投票者と投票管理者と立会人2人が投票箱の底を覗き何もないのを確認、続いて投票箱が閉じられ南京錠がかけられた。

 開始の7時から20分くらいの間に70人くらい投票者が切れ目なく続いた。出勤前に投票しようという人たちなんだろうと思った。その間に「投票済み証」を請求する人が5人くらいあった。私は、「投票済み証」というのがあることさえ認識していなかったので、関心を持ってしまった。

 「選挙に行ってきたので若干遅刻しました。その証明です」と言って会社に提出するのだろうか。証明書がなければ遅刻扱いする会社なんだろうか。あるいは特定の候補者に投票するよう言われその証しとして提出を求められているんだろうか…などなど思いが巡った。

 この20分が過ぎると来場者が途切れ緊張が解けたが、寒さが身に沁みだした。寒さを予想して、靴下は2枚重ねにし椅子に敷く座布団も持ってきていたのだが、寒くてたまらない。1時間くらいすると、投票管理者の彼から、「休憩をどうぞ」と声がかかった。休憩室(別の教室)へ行き、10分ほどの間休憩した。設置してあった熱湯の入ったポットからお湯を注いでお茶を飲みながら部屋を見渡すと、隅に1人、黒い背広を着た男性が座っている。どうも私服の警官らしい。何かあった時のために一日詰めさせられているらしい。

 投票所スタッフは、「投票管理者」1名、「立会人」2名(この3名のみが公益代表)、市職員(福祉課とか住民課とか日常は選挙と関係ない仕事をしている)10名足らず、加えてパソコンや発券機に詳しい業者からの派遣社員3名、そして警官1名だ。警官はずーっと休憩室だが、他のスタッフは、1~2時間に10分~15分、交代で休憩する。

 コロナ対策のため窓をあけているので寒くてたまらない。休憩の際、妻に電話し、ホカロンを数個持ってきてもらった。

 10時から12時前までは投票者が多かった。野外で案内・誘導を担当しているスタッフが投票所に入ってきて、「学校の外の道路の曲がり角まで、並んでいます」と言っていたのが聞こえた。12時を過ぎると、投票者は少なくなった。

 午後3時過ぎの休憩の際、投票所内に掲示してあった表を見ると、この投票所の有権者数6千数百、3時までの投票者数1800余りとなっていた。職員が、「前回と比べて少し投票率がいい」と言っていた。天気予報で午後雨となっていたので、午前中の進捗が良かったようだ。ただ、市全体の有権者数(18歳以上の人数)は36万余り。この投票所はその60分の1だから、全体の投票率への貢献度はわずかだと言える。

 夜、8時近くになると、職員が持ってきた何枚もの書類に、公益代表として署名捺印をした。そして、投票終了の8時になると、投票箱を施錠し、封筒に鍵を入れ、投票管理者と私のハンコで封印をした。そして、待っていたタクシーに「投票箱運搬中」という貼り紙をし、3個の投票箱を積み込み、投票管理者と私と私服警官が乗って、開票所である市立体育館へ向かった。

 開票所には沢山の人が集まっており、かなり華やかな感じを受けた。受付の係の人に鍵の封筒を渡し、彼らがタクシーから投票箱を運び出した。

 その後、そのタクシーで私の家まで送ってもらった。そのあと車は投票管理者の家へ向かった。