守屋 真実 「みんなで歌おうよ」

                     


 もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 

                   


 最初のデモ友

 

 Yさんは、私の最初のデモ友だ。2015年に日比谷野外音楽堂の集会で知り合った。偶然そばにいた彼女が可愛い缶バッジをつけていたので、「それどこで買いましたか」と尋ねたことから会話が始まった。それ以来6年の付き合いになる。

 住まいは群馬県のかなり旧弊な地域で、地元に一緒に行動できるような人はいないという。それでも片道三時間近くもかけて、毎月の東電本店前、日本原電前の抗議行動や19日の総がかり行動に通ってくるのだから大した情熱だ。保守大国と呼ばれる地域にも、心の中では革新を願う人がいるのだ。

 義父を介護し、夫を癌で亡くし、面倒を見ていた障がいのある妹さんも亡くなり…と、世間の苦労を一手に引き受けているような人だが、それだけ良く気が付く働き者だ。いつもポケットから飴やお菓子がドラえもんのように出てくる。さらには、器用でアイデア豊富な人でもある。百円ショップの材料を駆使して作った提灯は彼女のトレードマークで、よく集会の参加者から写真を撮らせてくれと頼まれている。年齢も近いし、お互い高齢の母親がいるので話が合う。活動が終わってから一緒に喫茶店に行くのも毎月の楽しみだった。

 そのYさんが、コロナ禍になってから集会に来ることが少なくなった。移動規制のせいもあるが、集会自体が一時間足らずに短縮され、終わってから食事に行く店も開いていないので、長い時間と高い交通費をかけてわざわざ来るには値しないと思うのも無理はない。おまけに今度は、お母さんが要介護になってしまったという。一人でどんなに大変な思いをしているか、私にとっても他人ごとではない。

 社会活動は、定期的に出かける習慣がついてしまえば苦にならないものだが、いったん遠ざかってしまうとハードルが高くなるものだ。Yさんもこのままやる気がなくなってしまったら寂しいなと思っていたら、十月の初めに別のデモ友が、「日本原電に提灯が来てたよ」と教えてくれた。集会にあの提灯がないと何かが足りないような気がしていたのは、私だけではなかったのだろう。よかった!苦労人だけに、彼女の怒りは本物なのだ。19日の総がかり行動にも来てくれて、やっと全員揃ったように思えた。

 先の衆院選で壊憲勢力が三分の二を占めてしまった今、なんとしても平和憲法を守り抜きたい。一人の仲間も欠けることなく声を上げ続けていきたい。仲間がいれば、闘うこともまた楽しい。