雨宮処凛の「世直し随想」

             いつになれば


 新型コロナウイルスのワクチンを、あなたは打っただろうか。

 私は打った。自治体のワクチンはキャンセル待ちすらできない中、年内は無理だろうと諦めていた。しかし、たまたま知人に相談すると、奇跡的にキャンセル枠が取れたのだ。

 一度目に打った日は、猛烈な眠さと腕の痛みがあっただけだった。しかし、2度目に打った翌日、40度近い熱が出た。熱は次の日下がったが、それから2週間たってもいまだに鈍い頭痛が続いている。

 というような「ワクチン副反応話」はみんな好きなようで、仕事のメールのついでにワクチン談義で盛り上がる。ファイザー? モデルナ? から始まって、みんなうれしそうに自分の副反応を報告している。そんな話をしていると、これも一つの「ニューノーマル」という気がしてくる。

 ワクチン2度目を打った数日後、あるバンドのライブに行った。大きなステージに大好きなメンバーが登場して、感動の時間だったけれど、何だか物足りない自分がいた。何だろうと考えて、気づいた。ファンの「歓声」が禁止されていて、客席は静まり返っていたのだ。ライブは文句のつけようがなかったけれど、ファンの歓声含めてのライブなんだなと、改めて思った。これも一つの「ニューノーマル」だろう。

 だけど、やっぱりコロナ以前の、客席がぐちゃぐちゃになって、喉がちぎれるほどメンバーの名前を叫ぶような、そんなライブが恋しくて仕方ない。

 いつになったら、元の日々が戻るのだろう。久々に、思った。