「働く」はみんなのもの

 

    シフト労働の闇(1)

    解雇なき雇用喪失

     

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 コロナ禍で第1次緊急事態宣言が出された2020年4月、女性の就業者数は前年同期比で31万人(男性は4万人)も減った。一方、失業率は2.3%で、男性の2.9%より低かった。就業者は減っても失業率は低い背景に、シフト労働」による「解雇なき雇用喪失」がある。

 大手飲食業系列のカフェで働く30代のパート女性は最初の宣言の時、仕事が途絶えた。カフェが入っていた商業施設が5月まで閉じられることになり、店も休業となったからだ。

 夫が単身赴任で2世帯分の家賃は負担が大きく、女性は1日5時間、週4~5日働き、毎月10万円程度の収入で家賃、保育料、食費をまかなってきた。

 だが、休業手当はシフトが決まっていた部分などについてしか認められず、それ以外は「シフトが入っていないから休業ではない」とされた。4月分として支給されたのは3万円。

 5月からは収入ゼロになり、食費を切り詰め、貯蓄も取り崩した。6月に入って客足は回復したが、シフトは1日4時間、週3回になり、収入は半減したまま戻らなかった。女性は2021年7月、休業手当の支払いなどを求め横浜地裁に提訴した。

 労働力調査の「就業者」は、「従業者」(調査週間中に収入を伴う仕事を1時間以上した者)と、「休業者」(調査週間中に仕事をしなかった者のうち給料や休業手当などの支払を受けている者、または受けることになっている者)を足した数。女性は、5月以外は「仕事を1時間以上し」たり「休業手当などの支払」を受けたりしていたから、「就業者」に分類される。

 失業すれすれでも「就業者」。そんな働かせ方が身近な日常となったこの社会の闇を、コロナ禍が浮かび上がらせた。