斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

 さいとう・たかお「ゴルゴ13」にも…

 

 

 やたら中国の脅威を煽り立て、日米〃同盟〃の強化など、軍事大国化を求める発言を繰り返すテレビ出演者には、よほど用心しなければならない。政府の意を受けた〃ステマ〃である可能性が、これまで以上に高くなりそうだから。

 朝日新聞が9月17日付朝刊で伝えた。それによれば、防衛省は予算の増額を目的に、ネット上で影響力を持つ「防衛・安全保障が専門でない学者、有識者、メディア関係者」ら、いわゆるインフルエンサー100人に働きかけ、世論を都合よく誘導する方針だ。芸能人やユーチュバーらを含めた人選が急がれており、衆院選までには幹部らが説明に回る段取りだという。

 どうせ昔からやられていたこと、今さら驚く必要もないとは、ありがちで、それはそれで的外れでもない反応だ。とはいえ、こうして表沙汰になったことの意味は大きい。レイシズムが横行し、平和や平等を希求する態度をせせら笑う冷笑主義が幅を利かせる現代社会。ましてネット万能の時代とあっては、むしろ原始的な世論操作こそ、破壊的な威力を発揮する危険を帯びかねないのである。

 朝日の報道を受けて、リベラル系サイト「リテラ」が、防衛省のターゲットと目される〃インフルエンサー〃を予想していた。タレントのカズレーザー、八代英輝弁護士、松本人志ら吉本興業所属の芸人コメンテーターたち…。

 そう言えば、アクション劇画の金字塔『ゴルゴ13』にまで、最近は政府の思惑が反映されたかのようなエピソードが目立つのが、作者と同姓同名の私は気になっていた。何者にも支配されない一匹狼たる作者と主人公に限って、と不思議がっていると、84歳だったさいとう・たかを氏の訃報が飛び込んできた。

 すでに作者の意志を離れたマネタイズ(収益化)が進行している可能性を恐れる。漫画ひとつ楽しんでばかりは読めない時代がやってきつつある、のだろうか。