連合通信社の労働ニュース


         個人自営業という名の「偽装委託」

 


    

 フリーランスには三つのタイプがあるとされる。一つが実際に独立できる基盤がある自営業や小規模事業者、二つ目が「雇用類似」、そして三つ目が「偽装委託」だ。

 雇用類似の厳しさは、雇用者と同様に身一つで働いているのに、取引先から指揮命令を受けない形をとっているため、雇用者への保護から外されている点だ。

 だが、偽装委託はさらに厳しい。時間管理や指揮命令など拘束度の高さは社員と同じなのに、契約上は「個人自営業」なので保障の外に置かれるからだ。「拘束が弱いから安全ネットフリー」のはずが、「拘束が強いのに安全ネットはフリー」ということだ。

 社員と思い込まされ「自営業って私のこと?」と驚く人も結構いる。

 そんな詐欺めいた労務管理を団体交渉で押し返した異例の事態が6月、マスメディアで報じられた。

 舞台は楽器大手ヤマハの子会社の英語教室。その講師らが、社員と変わらない働き方をしているのに「個人事業主」契約とされていることに疑問を持ち、組合を結成した。

 決め手は、新型コロナ災害だった。感染の拡大で教室は3月から休講になり、講師の収入は絶たれる。だが、自営扱いであるため賃金の6割は保障する休業手当が受けられず、2月分の報酬の2割の「見舞金」が来ただけ。おまけに個人事業主向けの上限100万円の「持続化給付金」は、報酬が「給与」として税務処理されているため対象外となりかねない。

 疑問を深めた講師らの間で労組への支持も広がり、会社側は雇用制度を導入することを表明した。

 コロナ災害が日常では見えにくい「偽装委託」の闇を浮かび上がらせ、これに働き手が向き合って動いたことが、事態を打開した。