斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

          愚劣な自画自賛

 西村康稔・新型コロナ担当相が6月24日、政府に医学的な提言を重ねてきた専門家会議を廃止すると発表した。新たな会議体を発足させて第2波に備えるという。

 当事者にも与野党にも根回しのない一方的な決定だった。コロナ禍の危機にあってなお、私たちは政府の異常な愚劣さばかりを見せつけられている。

 背景には安倍政権と専門家会議の対立があったらしい。詳細は割愛するが、いずれにせよ安倍政権にとっては、己の責任回避に利用できない集団の存在を許さなかった。議事録も残されていないので、新しい会議体とやらは過去の蓄積を生かすこともできず、ただ政権に都合のよい「お墨付き」を与えるだけの機能を発揮していくことになる。

 およそまともでない国で、しかし公表されている感染者数や死者数は、G7中で最も少ないとされている。安倍首相は5月25日の記者会見で、「日本モデルの力」「世界の期待と注目を集めている」と自画自賛。「コロナの時代の国際秩序をつくり上げていく上で強いリーダーシップを発揮していく」とまで吹いてのけた。

 誇大妄想狂もきわまれり。日本の市民は症状があってもPCR検査を門前払いされるのが常態化している。検査件数が極端に少なければ感染が確認される人も少ないのは当然だ。その他の事情等も考慮すると、「実際の感染者がどれだけいるかは誰にもわからない」。5月11日の参院予算委員会で、専門家会議の尾身茂副座長が答弁した通りである。

 6月4日には麻生太郎副首相が、参院財政金融委員会でこんな妄言まで吐いた。日本の感染者が少ない理由を他国に問われた際、「国民の民度が違うんだと言ってやると、みんな絶句して黙る」。

 対等に話せる相手ではないと呆れられただけなのが、この人たちには理解できない。そんな手合いを首相だ、副首相だと呼ばされている私たちとは、一体何なのだ。