斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

          安保の犠牲になる沖縄

 沖縄防衛局が、名護市辺野古の新基地建設について、一部設計計画の変更申請書を沖縄県に提出した。大浦湾側の埋め立て海域で確認された軟弱地盤を改良する必要に迫られたためだ。

 防衛省の設置した有識者会議による検討を踏まえた変更、という体裁。最深部が水面下90メートルに達するとされ、〃マヨネーズ並み〃とまで言われるポイントでも、周辺3地点のデータからの推定で、70メートル以深は固い粘土層なので、軟弱地盤は現有の作業船で改良できると判断されたことになる。

 はたしてそうか。有識者会議は「推定」に基づいて主張しているに過ぎない。実は防衛省の委託業者が実測したデータが存在し、より深い海底も軟弱地盤であることが明らかにされてもいるのだが、「信頼性が低い」として同省に一蹴された経緯があった。データを基に護岸の安定性を検討した立石雅昭・新潟大学教授(地質学)らの研究チームが「港湾施設の基準を満たさず、巨大護岸が崩壊する恐れがある」と指摘しているにもかかわらず、だ。

 万が一の場合は大惨事になりかねない。そこまで行かなくても半永久的な補修が必要になる。米軍の戦争のためにどれほどの血税が費消されるというのか。

 安倍政権の沖縄差別、市民の分断による支配手法もここに極まった感がある。というのは、今回の件は以上のような問題だけではないからだ。

 防衛省が沖縄県に設計変更の申請を行ったのは4月21日。つまり新型コロナウイルスの感染拡大に対して、玉城デニー県知事が独自の緊急事態宣言を打ち出した翌日の早朝なのである。あまりにも異常だ。

 救うべき国民の生命や尊厳には唾を吐きかけ、一方で米国にはちぎれるほどに尻尾を振り、服従のポーズで悦んでいただく。これぞ日本の「安全保障」なるものの神髄なのか。