北健一「経済ニュースの裏側」


             コロナ成金企業を監視せよ  


 アベノマスク(写真) の4社目の調達先が関連する実績の見当たらない零細企業だったことが物議をかもしている。だが、巨大企業なら問題がないというわけでもない。

 安倍政権が、特例承認を急いだ、抗ウイルス薬レムデシビルはもともとエボラ出血熱の薬だ。米国の大手医薬品企業ギリアド・サイエンシズ社が開発したが、どの国でも承認が得られていない。 

 米国立保健研究所(NIH)の新型コロナの患者を対象とする臨床実験で、この薬を使った患者は使わなかった患者より約4日間、回復が早かった。米食品医薬品局(FDA)は5月1日、重症の入院患者を対象にレムデシビルの緊急使用を許可した。待ち望まれる治療薬を使えるようにするために、米国での緊急使用許可の翌日に、安倍政権は閣議で政令を変えた。「Too Little, Too Late」(少なすぎ、遅すぎ)とも言われる日本政府のコロナ対策では稀に見るスピードだが、手放しでは喜べない。

 

 医学誌ランセットに掲載された中国でのレムデシビルの臨床試験では、回復までの日数に有意差はなかった。2つの臨床試験では、死亡率は有意に下がらなかった。また中国の臨床試験では、レムデシビルを使った約18%が急性呼吸不全などを起こし重篤化した。ギリアド・サイエンシズ社は、ブッシュ政権で国防長官を務めたラムズフェルド氏が元会長だ。米政府は、同社が開発した鳥インフルエンザ治療薬タミフルを大量に買って株価が急騰、ラムズフェルド氏は在任中、私財を増やしている。

 さて今回、トランプ大統領が強く推しているからといって、特別扱いで承認を急ぐのは正しいのか。ルーズベルト米大統領は第2次大戦中、「世界が惨事に見舞われた結果、アメリカに一人でも戦争成金が出現することがあってはならない」と述べた(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』)。

 特別扱いで「コロナ成金」になる企業がないか、メディアは監視すべきだろう。