若者たちの未来を奪うな


        奨学金問題対策全国会議事務局長 岩重佳治

  (いわしげよしはる)1958年、東京生まれ。97年弁護士登録。日本弁護士連合会の貧困問題対策本部委員も務める。著書に「日本の奨学金はこれでいいのか!」(あけび書房、共著)など。


 

 私たちの全国会議は、わが国から「奨学金被害」をなくすことを目的に、2013年に結成されました。奨学金返済による生活破綻など、厳しい状態が広がっています。若者たちがつぶれてしまっては、この国の未来に希望は持てません。早急に、まともな学費と奨学金の仕組みを構築すべきだと考えています。
 もともと私たちは、クレジット・サラ金問題に取り組んできました。グレーゾーン金利撤廃の法改正を実現し、多重債務被害に一定の手を打てたと思っていたところへ、奨学金返済に関わる相談が入りました。
 「大学卒業後に就職したが、うつ病になり退職。返済の減額申請をしても54歳までかかる。結婚も出産も考えられない」「失業中。連帯保証人の親族に迷惑をかけたくない。いっそ死んでしまいたい」などの実態があることに気付きました。多重債務被害が形を変えて起きていることにショックを受けました。
 背景には、国公立を含めて高すぎる学費と生活困窮の広がりがあります。そんな中で「回収至上主義」に走る日本学生支援機構の問題を指摘したい。回収率95%は異常です。債権回収会社やブラックリスト、訴訟まで利用した、無理な取り立てが横行。奨学金を返したくても返せない人を経済的にも、精神的にも追い詰めているのです。
 多重債務の場合と同じく、構造的に生み出されている被害者にほかなりません。
 「無理なく払える学費」と、「無理なく返せる奨学金(制度)」の実現が必要です。高等教育の無償化を目指す学生グループ「FREE」とも二人三脚で、この問題に取り組み始めました。
 若者たちが置かれている実態を世の中に明らかにする中で、改善を図りたい。
 今ならまだ間に合います。