保険募集・イマムカシ(その5)

                    鈴木 健


                    一体性ありすぎるとまともな議論ができない                                     


 自分は生保より損保が性に合っていると書いたが、損保も含めて保険募集の仕事は数多い職業の中でも、人の生き死に接する機会が多い職業である。

 それは、保険の内容のことではない。契約者とのお付き合いのことである。家族ぐるみのお付き合い、冠婚葬祭、親子三代の交流、50年以上のお付き合いも珍しくない。

 人みな師なり、というけれど、そういう意味で募集ほどさまざまな師に恵まれる仕事はない。大学を出た後も、私の人生はそういう契約者に囲まれて学び続けてきた人生でもあった。そして、募集人は時間給労働者と違って、ある程度時間のコントロールが効くという大きな「メリット」もあった。それゆえに、会社と募集人が「濃厚接触」を排し、適度な距離間を保ちながら、独立した存在として相互に意見を言い合える関係になっていた。
 ところが、法人代理店しか認めないようになった今の時代では、代理店も会社も一体性が強すぎる。いや、募集人や代理店はそのことを強いられる。まともな議論など成り立たない関係が出来てしまった。これでは良い損保を作ろうという建設的な相互批判、切磋琢磨の環境は生まれない。