現代損保考

真山 民


   新型コロナウイルスに損保はどう向き合っているか
                               事後対処に過ぎないが…
           

           


 新型コロナウイルスの暴威は衰える気配さえない。ヒト・モノ・カネの流れは途絶えがちになり、経済的な損失が日々増大している。そういう中で損害保険はどういう役割を果たしているのだろう。

 例えば「興行中止保険」。新型コロナウイルスの感染拡大で大規模イベントが続々と中止され、損保が販売する同保険に注目が集まっている。台風などの自然災害やコンサートの出演者が病気になったのを理由にイベントが中止になった場合、会場設置にかかった費用などを契約内容に応じて8~9割補償する保険だが、感染症は戦争や地震と並んで補償の対象外である。
 もう一つ、損保への問い合わせが増えているのが、急病などを理由に予約した旅行や宿泊をキャンセルしたときの料金を補償する「旅行キャンセル保険」である。しかし、この保険も新型コロナウイルスの感染を避けるために自己判断でキャンセルした場合には補償の対象外である。
 「海外旅行傷害保険」はどうか。疾病死亡保険金特約では、旅行中に疾病で死亡した場合、または発病して帰国後72時間以内に治療を開始し、帰国後30日以内に死亡した場合に保険金が支払われる。また疾病治療費用保険金特約は、旅行中または帰国後に発病して、72時間以内に治療を開始した場合に保険金が支払われる。
 損害保険料率算出機構が発行している『傷害保険の概況』によれば、2017年に疾病保険金特約により支払われた保険金は44人に4億3,856万円で、被保険者一人当たり997万円、疾病保険金特約は被保険者10,772人に7億7,162万円、一人当たり約7万2,000円が支払われている。今回、コロナウイルスに感染して、「海外旅行傷害保険」のこの特約で補償を受けた人もいたと思われる。

 しかし、日本人の昨年の海外旅行者数は2,008万人、その一方で「海外旅行傷害保険」の契約件数は基本契約の傷害死亡保険金でさえ300万件程度に過ぎないから、今日でも「海外旅行傷害保険」が旅行者の間で普及しているとはいえない。生命保険はどうかといえば、医療保険金も定期死亡保険金も保険金支払いの対象としている。
 

 生保にしろ損保にしろ、新型コロナウイルスに罹患して、たとえ保険金が支払われたとしても、それは事後の対処に過ぎない。同じことは、各国が表明している経済的な措置(金融緩和や企業に対する資金支援など)についても言える。そういう措置を国がいくら講じても、コロナウイルス禍を終息させなければ、中小企業は倒産し、労働者に対するリストラ・解雇も止まない。
 人通りの途絶えたニューヨークでは、レストランなどの営業中止で職を失う人が相次いでいるし、日本でも企業の倒産や派遣労働者に対する雇い止めが出始めている。黒字企業でさえ、体力があるうちに身軽になろうと、「余剰労働力」を削ぎ落とそうと「希望退職」を募っている。
 まさにカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン』(2007年、邦訳は岩波書店)で告発した「惨事便乗型資本主義」であり、新型コロナウイルスのどさくさに紛れて「緊急事態宣言」を可能とし、改憲の下地になりかねない「新型インフルエンザ等対策特別措置法」も「惨事便乗型資本主義」の一環であることを忘れてはならない。