雨宮処凛の「世直し随想」

                  納得できない


 相模原市の障害者施設で45人が殺傷された事件の裁判に通っている。4回傍聴し、1月には横浜拘置所で植松聖被告と面会した。

 

 謎は深まるばかりだ。大麻による心神喪失で無罪を主張する弁護側。一方、植松被告は「責任能力がない者は即、死刑にすべき」というスタンスで自分には責任能力があると主張する。

 裁判を見るほど、事件前の被告が「妄想状態」だったことを突きつけられる。「意思疎通のできない障害者を殺す」と吹聴し、「殺せばトランプ米大統領が絶賛してくれる」「100億円入る」。「お金入ったら遊ぼう」と友達を無邪気に誘い、「自分は選ばれた人間だ」「UFOを見た」などと口にしている。

 また法廷で浮かび上がったのは権力者や有名人など「力を持つ者」「強い者」への憧れが異様に強いことだ。トランプ大統領だけでなく、フィリピンのデゥテルテ大統領や北朝鮮の金正恩委員長の名前を出して功績を褒めたたえる。マイクロソフト創業者ビル・ゲイツには「さん」をつけ、「天才・堀江(貴文)さんは」という言葉も飛び出る。

 

 彼は恐らく、事件を起こせば「偉い人」が「よくやった」と褒めてくれると思ったのではないだろうか。実際、衆院議長に宛てた犯行予告文には、支援金として5億円、禁錮は最大2年と書かれている。障害者を殺すことが、本当に「社会に貢献すること」だと信じているようなのだ。

 判決は3月。植松被告は死刑になるつもりはないが死刑判決が出たら受け入れると述べた。覚悟している様子だが、それで終わりでは、納得がいかない。