雨宮処凛の「世直し随想」

               越年炊き出し


 この年末年始をあなたはどう過ごしただろう。

 旅行に行った人や帰省した人、また家で寝正月という人にはうれしい9連休だったはずだ。
 しかし、そんな9連休を乗り越えるのが大変な人たちがこの国には多くいたこともまた事実だ。年末年始は仕事がなくなる。よって日雇いで働き、ネットカフェで寝泊まりしていた人が路上に出ざるを得なくなる事態も起きる。困り果てても役所の窓口は閉じているので公的な支援につながることもできない。
 年末年始は、それまでギリギリ屋根の下で寝ていた人たちが一気に「初めての路上生活」に追いやられる時期でもあるのだ。しかも「世の中はお正月で浮かれているのに」という時期に初野宿をすることは心をえぐる。冬の夜の寒さは一気に身体をむしばむ。そのため毎年、年末年始にはボランティアによって各地で炊き出しが実施され、生活相談や健康相談も行われる。
 この年末、私は例年通り、越年炊き出しの現場を訪れた。渋谷、池袋、山谷、横浜・寿町、そして今回初めて開かれた「年越し大人食堂」だ。
 各地の現場には、それぞれ切実な事情を抱える人がいた。失業から住む場所を失い、野宿生活となってしまった女性。所持金が尽きてやって来た男性。DVから逃げている女性。渋谷の炊き出し現場には千葉から歩いて来たという男性もいた。ホームレス寸前の人に私と同世代の30~40代が増えている。ロスジェネだ。
 「人生再設計第一世代」と名付ける前に、この世代の底上げの必要性を切に感じた年末年始だった。