野宿者は五輪の邪魔者か?


           もやい理事長 大西連 さん


 夏の東京五輪・パラリンピックに向け、野宿者が公園や路上から追われる恐れがあります。テロ対策によって移動や荷物の撤去を求められる可能性があるためです。そうならないよう、居場所の確保をはじめとする対策を東京都などに要請するネット署名に取り組んでいます。

 実際、新たな国立競技場建設時には明治公園から野宿者が排除されました。
 加えて、五輪観戦の旅行者やボランティアが増えれば、宿泊施設の不足・料金の高騰が起きます。荷物を預けているコインロッカーも使えなくなって、居場所をなくす事態が想定されるのです。
 従来の居場所からどこへ移動すればいいのでしょうか。例えば、新宿中央公園は今、民間の指定管理者に委託されていて、杓子(しゃくし)定規に野宿者を排除しがちです。公的機関が運営していれば、黙認してくれていたケースは減ってきました。移動先を見つけても、近隣住民やそこの野宿者とのトラブルが心配。健康面でも大丈夫かなと思います。
 私たちは都に対し、移動が必要な場合でも、当事者と協議した上で代替地・寝場所の確保など適切な対応を求めています。五輪期間中に、安価もしくは無料で寝泊りできる公的な宿泊場所を用意することも訴えています。
 ビッグイベントの開催に伴って、苦しい人、被害を受ける人がいることをぜひ知ってほしいし、そうした人々がきちんと支援される社会をどうつくっていくかも考えてほしい。
 私たちの主張に対し「せっかくのお祭りムードに水を差すな」「迷惑なノイズだ」という声もあるでしょう。でも、ノイズを無視し、踏みつけていたら、東京都などが目指す「ワンチーム」にはなれません。

 

 おおにしれん 1987年、東京生まれ。もやいは2010年から関り始め、14年から理事長(現職)。近著に「絶望しないための貧困学」(ポプラ新書)がある。