雨宮処凛の「世直し随想」

               木内みどりさん


 俳優の木内みどりさんが急死した。 
 11月21日、唐突に報じられたニュースに頭が真っ白になった。うそだ、うそだとつぶやきながらも、テレビでは木内さんの訃報が伝えられていて、あぜんとしながらそれを見た。
 2019年夏、木内さんとは毎日のように会っていた。彼女が参院選でれいわ新選組を応援し、街宣で毎回のように司会を務めていたからだ。ボランティアとして筋萎縮性側索硬化症(ALS)の候補者・舩後靖彦さん(現在は参院議員)の「サポート担当」をしていた私は、いつも現場にいる木内さんを見るとほっとした。どんなにバタバタした現場でも木内さんはいつもニコニコしていて、みんなの緊張を緩ませる空気をまとっていたからだ。
 木内さんと初めて出会ったのは、官邸前に毎週のように数万人が集まり、「原発再稼働反対」を訴えていた12年初夏だったと思う。以来、木内さんの姿は多くの現場にあった。脱原発デモはもちろん、いつしか脱原発集会の司会は木内さんというのが定番になり、15年に安保法制反対運動が盛り上がった際には国会前で何度もお見かけした。
 政治的な行動を堂々としながらも木内さんはなぜか芸能界から干されることはなく、私にはそれが芸能界やメディアの「最後の良心」のようにも見えた。
 そんな木内さんがもういないことが信じられない。あれだけの大物俳優なのに立場や有名無名関係なく、「本気の人」をリスペクトしていた木内さん。私もあんなカッコいい女性でありたいと、そうなりたいと、今、心から思っている。