雨宮処凛の「世直し随想」

            分断乗り越える政治を


 4年間にわたるトランプ政治が終わった。

 今、改めて4年前の絶望を思い出す。トランプ氏の勝利が伝えられてすぐに米国で急増したヘイトクライム。分断と憎悪と差別をあおる言葉の数々。ファクトに基づかない発信。誰かを「敵」に仕立て上げ、攻撃をあおるやり方。そして新型コロナウイルス感染が拡大してからは、「中国ウイルス」というトランプ氏の言葉がアジア人へのヘイトクライムを招いた。

 「むき出しの、暴力的な本音」ともいえる発言は、何かのタガを外した。「きれい事や建前ばかり言っていたやつらが何かしてくれたか?」と理想を語る人を陳腐化し、連帯ではなく分断の種をばらまいた。

 移民や女性蔑視の発言は不満を持つ人々の「ガス抜き」として作用し、開き直りや居直りはいろいろなものを劣化させた。

 「分断ではなく、結束を目指す大統領になる」。勝利宣言の場でそう述べたバイデン氏の言葉に、久しぶりに「マトモな言葉」を聞いた気がした。

 もちろん、バイデン大統領の誕生で、何もかもばら色になるなんて思っていない。しかし、分断の修復に取り組むと宣言する大統領の誕生は、ほっと一息つけるものだった。そうして、気づいた。なんだかこの4年間、力がある人に振り回され続けるというDVを受けていたようなものだったのではと。それくらい、おびえていた。何も感じないよう、意図的に自分をまひさせていた。

 米国はトランプ政治と決別した。さて日本はどうするか。分断を乗り越える政治を期待したい。