斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

       学生への「刷り込み」教育を警戒

 

 

 センター試験に代わって来年から始まる大学入学共通テストの受験科目が、大幅に見直されることになりそうだ。大学入試センターがこのほど、現行の6教科30科目を、7教科21科目に削減する素案をまとめた。高校や大学の意見を踏まえて、年度末までに最終案を公表する方針である。

 不安材料は多い。報道の多くは、素案に提示された新教科「情報」の問題点を挙げている。出題範囲はプログラミングを学ぶ「情報1」。高校の必修となって17年間が過ぎているのだが、今なお指導教員が不足がちで、他の専門を持つ教員が交代で担当するケースなどが目立つのが現場の実態という。公平さを担保できる条件整備が必要だ。

 本稿ではこれに加えて、新科目「歴史総合」にも触れておきたい。これは2022年度の再編が予定されている高校「地理・歴史科」に新設される科目で、18世紀以降の近現代史に特化し、ただし日本史と世界史を融合させつつ学ぶ。「日本史」と「世界史」が分離されてきた状況を憂えた日本学術会議の提言が学習指導要領に反映された。同会議は大学入試センターに対しても、その出題を求めていた。

 グローバリズムの時代に、日本史と世界史をバラバラに学ぶなんておかしい。それはその通り、ではあるのだが、ここでもまた、理想的な歴史教育を実践できる教員、あるいはそれに応えられる高校生がどれほどいるのかという疑問が付きまとってしまう。

 「歴史総合」は、近現代史が対象であるだけに、やり方次第では、政府が一昨年に大々的なキャンペーンを展開した「明治150年」すなわち富国強兵・殖産興業、ひいては「大日本帝国」バンザイ!を高校生らに刷り込む結果になってしまいかねない。だからこそ安倍晋三前政権は、学術会議の理想論を容れたのではないか。受験科目ともなればなおさら懸念が募る。警戒すべきテーマだと思う。