雨宮処凛の「世直し随想」

            電話相談から見える貧困


 新型コロナ禍の下で、これまで4回の電話相談会に関わってきた。「いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」だ。4月、6月、8月、10月と開催されたうち、8月の相談会の結果について、貧困問題に関わる研究者でつくる「貧困研究会」が分析してくれた。

 分析対象となった相談は221件。性別では男女がほぼ半々で、40代以上が大多数。職種は、無職に次いでサービス業が多い。パート・アルバイトが多数だが、正社員も15%いた。

 相談してきた人の貯金額の中央値は10万円で、本人を含む世帯全体でも17万円にすぎない。今年2月と比較して、最も月収が減っているのは自営業でマイナス11万円以上。次いで派遣の9万円以上減、フリーランスの6万円減。何らかの借金や滞納がある人は37%に上った。

 分析してみると、さまざまなことが見えてくる。一方、電話相談をしてくる人は電話が止まっていない人である。4月からメールによる相談にも対応しているが、圧倒的に多いのは、すでに携帯電話が止まっている人からのSOSだ。携帯代さえ払えない状況の人の中には、すでに住まいを失い、野宿をしている人もいれば、何日も食べていないという人もいる。

 支援団体の助けで無事に生活保護を受けても、携帯がないとアパートを探すことも難しい。仕事だって携帯がなければなかなか探せない今、携帯はもはや命綱だ。住まいの問題に取り組む「つくろい東京ファンド」はそうした人に無料で電話を渡す支援を始めたが、国が主導して積極的に支援してほしいとつくづく思う。