SOMPOケアの収益に

                8月号「損保考」への読者の質問に答えて    真山 民                                                                                                                    


 

 読者から先月号「体のいい退職強要? 損保ジャパンの4,000削減介護事業への削」について、「売上高より経常利益の方が大きく、また利益が極端に少ないのはどういうわけか」というご質問をいただいたので、以下説明します。 

 

1、まず、損益計算書(P/L)とは何かですが、図示すれば以下の通りとなります。

 

2、次に、P/Lの勘定項目を説明します。 

 

売上総利益=売上高-売上原価で計算。介護事業で売上原価に該当するもの。例えばデイサービスなどの食事の売上に対する食材の仕入などがある。 

 

②営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費で計算。販売費及び一般管理費は、食材仕入のように直接売上につながるものではないが、人件費や家賃、旅費交通費、通信費のように介護事業の売上や管理などに必要な経費をさす。 

 

③経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用で計算。営業外収益は、介護事業以外から発

生し収益で毎年発生するもの、例えば銀行預金の利息などで、営業外費用は、介護事業以外か

ら発費用で毎年発生するもの、例え銀行借入の利息などがある。

 

④税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失で計算。特別利益は介護事業以外から発生した臨時収益で、例えば不動産や長期保有の株式や証券の売却益。特別損失は介護事業以外から発した費用で臨時に発生したもの、例えば、土地や株・証券の売却損などがある。

 

当期純利益=税引前当期純利益-法人税等で計算。   

 

3、以上を踏まえSOMPOケアの2018年度決算を見ると、持株会社のSOMPOホールデングスの決算短信には「介護・ヘルスケア事業の経常収益は前連結会計年度に比べて3億円減少し、1,275億円となり「(税引き前)当期純損益は前年度に比べて12億円増加し純損失は2億円」と報告しています。

 

 また「セグメント(=持株会社の傘下の各企業)ごとの売上高、利益または損失等の金額に対する情報」を見ると、売上高(経常収益の金額」として約1,279億円を計上する一方、減価償却費が約514億円、のれん償却費が約481億円、支払利息が292億円を計上しており、この3つの費用の合計1,287億円だけで、売上高1,275億円を上回ります。 

 

SOMPOホールディングスは介護事業の展開にあたりワタミなど他の介護事業の買収を行ってきましたが、企業の買収には、それ以降数年、10数年とのれんの償却を伴いまた介護事業のように多くの施設を必要とする事業には毎年多額の減価償却費が発生します。 

 

さらに厚労省の「平成29年度介護事業経営実態調査」によれば、介護事業の収入に対する人件費の割合は平均60%にも及びます。以上のことから、介護事業の収支残率は1.6%からせいぜい3.4ほどに過ぎず、まさに「規模の利益が働かない事業」であることがわかります。 

 

このような介護事業をとりまく厳しい状況を考えると、SOMPOケアへ転籍する社員は損保以上の厳しい条件下で働くことになるのではないかと思わざるを得ないのです。