雨宮処凛の「世直し随想」

              映画「新聞記者」

 

 話題の映画「新聞記者」を見た。うわさ通りの「問題作」だ。参院選を前にこの映画が封切られた意味はあまりに大きい。連日満席が続いている映画館が多いということで、実際、私が見にいった時も客席はいっぱいだった。

 「この映画はただのフィクションではない」といわれているように、映画は実際の事件を下敷きに進む。

 伊藤詩織さんをほうふつとさせるレイプ事件の被害者。大学誘致のためのさまざまな不正。内閣情報調査室による情報操作によって「国に都合の悪い人間」が陥れられる手法。そして官僚の自殺。

 映画を見て、この国は根底から変わってしまったという事実を改めて突きつけられた気がした。10年前、20年前、これほどの不正が続けば政権は途端にひっくり返ったのではないか。ひっくり返らないにしても大いに揺れただろう。

 ところが安倍政権は今のところ、びくともしていない。気が付けばメディアは及び腰になり、官僚や、権力の近くにいる者たちは「忖度(そんたく)」することが当たり前になり、そうして密室で事が進めば進むほど、人々から見えなくなるので関心も低くなるという悪循環。

 「それでもこういう映画が撮られ、公開される自由はあるんだから、日本はまだマシ」という声もある。

 しかし、「日本はまだマシ」と言い続けているうちに、取り返しのつかない方向に向かっている気がして仕方がないのは、私だけではないはずだ。

 危機感を新たにするためにも、ぜひ見てほしい映画である。