損保雀士・川井吉太郎の「麻雀日誌」 


雀聖・阿佐田哲也さんの打法

 11巡目でカン4ピンの聴牌であるが、もちろん三色への手変わりを展望してリーチとはいかない。そこまでは理解できる。ただ、次順で引いてきたのが7ソー。そこで8ピンを打ち出した手段が(上段)観戦している私をびっくりさせた。三色形を確定し7ソーか3ピンへのくっつき聴牌を狙うという趣旨はわかるが、なにしろ聴牌崩しという勇気が必要な手段だ。ピンズが異常に高くソーズは極端に安い場である。他家の捨て牌などから判断して、3ピンへのくっつきより7ソーへのくっつきを期待したのだが、実は、この打ち手、場に6ソーと9ソーを既に切り飛ばしているのである。万一6ソーを引き戻せば5・8ソーの理想の聴牌となるが、フリテンのリスクも高いではないか…と思っているところへ案の定次のツモが8ソー(下段)。6・9ソーのフリテンになってしまった。しかし、この打ち手は確信ある手つきで3ピン打で果敢にリーチ。そして見事一発で6ソーをツモってしまったのである。ハネ満だ。

 

 それにしても、である。重要な大会で「打点」が欲しい場面とはいえ、到底人まねのできない大胆不敵な打ちぶり。情緒に流されず冷静な判断に加えた天才的な勘。お見事、というほかない。

 

この打ち手、誰あろう。雀聖と言われたあの阿佐田哲也(作家・色川武大)さんである。私は同じ大会に参加し、たまたま手空きで、阿佐田さんの後ろで観戦していた。忘れられない感動の一局だった。

 

(川井吉太郎氏は2019年7月17日死去されました。謹んでご冥福を祈ります。なお、本欄は同氏が残された原稿・記録に基づき、引き続き連載していきます)

 

 

 

 


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 詰碁出題  九段 石榑郁郎

 

【黒先】黒1、3がダメ詰まりを狙った好手です。(5分で1級)

  

 

 

 

 

 詰将棋出題 九段 西村一義

 

  持ち駒 銀銀

 

「ヒント」 自然な王手が続く…
 (10分で2段)