暇工作「課長の一分」


赤じゅうたんを歩きたがる人

 

     

 ロシア訪問の北朝鮮・金正恩さんが列車から降りて歩く道筋に敷くため、北朝鮮から赤じゅうたんが持ち込まれたというニュースがあった。金さんに限らず、トランプさんも安倍さんも赤じゅうたんの上を歩く。猫も杓子も、損保会社のお偉方まで歩く。猫や杓子君たち、少しは遠慮したまえ。我々日本と世界を動かす政治家たるものの権威が下がるじゃないか、なんて安倍さんたち内心で思っているかもしれない。

 

社長が赤じゅうたんの上を歩いたのは、支社激励と銘打たれた訪問のときだ。乗用車を降り、支社の玄関まで社員たちが準備した赤じゅうたんの上を、天下を睥睨するかのような態度で進んだ。大袈裟だねえ。 

迎える社員たちは、腰を深く曲げ「畏れ多い」とばかりに、社長が赤じゅうたんの上を通過する時間帯の最初から最後まで、お辞儀を続けている。腰痛気味の暇には、そんな長時間のお辞儀は無理だから、顔をあげてじっと社長の一挙手一投足を観察していた。 

社員の日頃の奮闘をリスペクトし、さらなる激励を行うために来たのは社長なんだから、社員たちはもっと胸を張っていんじゃないか。社長は「上から目線」ではなく、せめて、「フラット目線」で社員に接すべきなのに、なんだ、この態度は…なんて思いながら。 

それにしても、滑稽だね。たかが損保会社社長の赤じゅうたん歩き。子どもを卒業して大人になった社員たちは、その滑稽さをまともに表明できない。真実を恐れ入った様子のなかに隠し込む。だからますます、社長には自分の「裸の王様」ぶりが理解できない。 

あとで、ある研修社員が「あのじゅうたん、滑り止めのためには赤がいいのですかねえ」と、暇に話しかけてきた。

 

社長が、滑って転んで…なんてことになったら、権威発揚のつもりが一転お笑い話のオチになる。転ばぬ先の赤じゅうたんか。でも、色と滑り具合の相関について暇は知らない。