現代損保考

真山 民


避けられないカーシェアリング時代

                                     

 

自動車の費用 

「生涯に取られる税金・保険料は1億1,443万円」、「週刊現代」(5月11・18日合併号)がこんな特集を載せていた。60歳で定年退職・90歳まで生きた場合、生涯賃金が3億2千万円として、税金(所得税・住民税・消費税)の合計が4,925万円、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・介護保険料)の合計が4,427万円、これだけで9,352万円にもなる。

 平成元年(1989年)と2017年の租税負担と社会保障負担を合わせた「国民負担率」は、財務省の統計(真偽のほどはさておき)によると、37.9%から42.5%と、実に4.6%も上がった。
 自動車にかかる税金もバカにならない。12年ごとに買い替え、生涯で5台購入するとすれば、
自動車税・重量税・取得税・ガソリン税の合計が483万円。これに自動車の取得費用、車検費用、自動車保険、駐車料金等を合わせれば、自動車に費やすカネも極めて多額で、家計への負担も大きい。

 

 自動車の「社会的費用」
 自動車による「社会的費用」も勘算しなければならない。宇沢弘文は名著『自動車の社会的費用』でこう述べている。「自動車のもたらす社会的費用は、
具体的には交通事故、犯罪、公害、環境破壊というかたちをとってあらわれるが、いずれも、健康、安全歩行などという市民の基本的権利を侵害し、しかも人々に不可逆的な損失を与えるものが多い。このように大きな社会的費用の発生に対して、自動車の便益を享受する人々は、わずかしかその費用を負担していない」 損害保険会社が売る自動車保険は、特に示談代行というサービスによって事故の被害者と社会に「不可逆的な損失」を増大させたといえる。

 以上のことから、カーシェアリングを促進する必要性と可能性は十分考えられることである。『下流社会』の著書で知られる三浦展(あつし)は、『1980年代から見た日本の未来』(イースト新書)で、すでに2002年に「次代の消費のテーマとして、『脱・私用』を掲げ、私有よりレンタルやシェアやコミュニティを重視する時代を予測していた」という。慧眼と言わなければならない。
 

 損保の対応

 損保もカーシェアに向けて動き出した。SOMPOホールディングスとDeNAが、個人間で車を貸し借りするカーシェアリングとリース分野で提携すると発表。 カーシェアはDeNAが20万人超の会員を持つサービス「エニカ」を新会社として独立させ、これに新設する個人向けリース会社のサービスを組み合わせる。リースで車を利用する人は毎月一定額のリース料を払う。この車を他人に貸して得た収入をもとにリース料軽減につなげる。なるべく小さな負担で車を持てる仕組みをつくる。 

 SOMPOはカーシェア向けの自動車保険を開発。加入者が車を貸し出している間だけ保険料を割り引く商品などを検討する。若者の車離れで従来の自動車保険市場の縮小が見込まれるなか新分野を開拓する。
 このスキームは当然自動車の販売台数と自動車保険料の落ち込みを前提したものだ。シェアエコノミーが避けがたい動きとすれば、代理店もこれにどう対処すべきか、対策が迫られている。