そんぽ随感録 天災は忘れる間もなくやってくる


                                                    松久 染緒


 「天災は忘れた頃にやってくる」というのは、寺田寅彦の有名な言葉だが、昨今は、天災のみならず、事故、詐欺など様々なものが忘れる間もなくやってきて、大きな被害をもたらす。

関東直下型大地震や、南海・東南海大地震の危険がさし迫っているという。

首都圏には、一都三県に3000万人が住んでいる。その都心南部直下地震で想定されているマグニチュード7.3の地震が起きると、一都三県の面積の約三割が震度6弱以上になる。その結果、最悪シナリオでは、2万3千人が死亡、61万棟が全壊焼失するという。

東日本大震災では、死者・行方不明合わせて2万2千人だったことから考えると、この想定は極めて甘いのではないか。

また、600万人から800万人もの帰宅困難者が発生し、避難者は700万人を超え、阪神淡路大震災が24万人、東日本大震災が47万人だったから桁違いになる。

経済被害は95兆円と見積もられている、一年間の国家予算に匹敵する金額である。

首都圏には原発(茨城県東海村)もある。原子力損害賠償法3条には、「原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは原子力事業者が損害賠償の責めに任ずる。ただし、異常に巨大な天災地変によって生じたものであるときはこの限りでない。」とあり、大津波が想定内・外でいまだにもめている。17条には、「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにする」のが政府の責任となっており、損害賠償責任を負うとはなっていない。16条には「政府は原子力事業者が損害を賠償するため必要な援助を行う」とされており、要するに電力会社の支援はするが政府が賠償責任を負うことはないというのが法律の規定だ。

地震保険の再保険で政府・民間合わせての総填補限度額は現在7兆円だが、総支払保険金がこれを超え、例えば10兆円となれば、個々の保険金は7/10を乗じた額に減額される。

いつどこで起きるか、どのくらいの被害や大きさか全く想定できない。自然は常に想定外なのだ。政府も頼りにならない。

とすれば、直ちに家具・家電を固定し、水、食料の備蓄をチェックし、避難場所の確認、懐中電灯・着替え・現金など非常持ち出しを準備するしかない。被害を最小限にする工夫をしつつ、2,3週間自ら生き延びる手立てを講ずるしか方法はない。